セレノグラフィカ ダンス発信プロジェクト「身体のことば~振付家の視点から~」対談その③(全文掲載)

 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市文化芸術活動緊急奨励金を受けた活動として「身体のことば~振付家の視点から~」を実施しております。
 今回は、芸術に対する理解と関心をお持ちで、社会的弱者に寄り添って仕事をされている3名の方(藤岡保さん:北九州市身体障害者福祉協会アートセンター・センター長、西田尚浩さん:京都市東山青少年活動センター シニアユースワーカー、鈴木章浩さん:二葉むさしが丘学園(東京都小平市)自立支援コーディネーター)とオンラインで対談、その内容を文字起こししてウェブ上に公開します。

 その第三弾として鈴木章浩さんと隅地茉歩の対談の全文を掲載させていただきます。分量は多いですが、読み応えのある充実した内容となっております。ご一読いただけましたら幸いです。

 セレノグラフィカとしての創作やワークショップ活動の中で現場を共にし、私たち自身が大いに刺激を受け、視野を広げて頂いたお三方に改めてお話を聞く機会を設けることにしました。コロナ禍に関しても、マスコミで取り上げられている論調とは違う視点と見解をお持ちだろうと思うので、独特の視点ならではのお話を聞き、その充実感を広く市民の方々と共有できればと考えました。

 身体表現を専門とする者として、今回のコロナ禍の影響(経験として示唆を受けたことを含む)を考察し、新しい生活様式ということが提案されている中で、今後の創作や活動に生かしていくと同時に、広くその成果を社会に還元できる方法を探し、試していきたいと思っています。

 日々ネット上では、膨大な情報や言葉が飛び交っています。新型コロナウイルスの感染に関しても同様です。それらの情報群の利便性や即時性の恩恵に預かりつつも、やがて消費され忘れられかねない言葉とは異なる、時間が経過した後にも残る言葉を掘り起こしておきたいと考えるようになりました。それを、居住地や時間を問わず読める形で公開し、読んでくださる方たちの感覚を刺激し、何かを思考するひとつの材料になれば何よりです。

 今回の感染拡大によって起きた生活の変化は身体感覚に対しても大きな変化を迫っています。対談をお願いする3名の方は、就労しづらい若者たちや、障害をお持ちの方々や、親元を離れてクラス子どもたちなど、身体に対して、より繊細さが求められる現場に立っておられる方ばかりです。そういう方々がこの期間に経験され考えられたことをお聞きし、こちらもそれについての感想を述べ、考えを深めてコラムにまとめます。全てウェブ上に公開していく予定ですので、これがきっかけで意見交換の場が作られたり、ネットワークの広がりに繋がっていけば幸いです。

 今回の試みは、身体を見る、扱う、感じる専門家である振付家の視点からのことばが、少しでも何かの刺激やきっかけになれば、という試みです。対談は今後不定期にでも継続していく所存です。

隅地茉歩

身体のことば~対談③

鈴木章浩 × 隅地茉歩 (全文掲載)

 

鈴木章浩(以下S):例えば野球のチームに入っていても、負けることがないんですよ、私。
隅地茉歩(以下M):はあ!
S:100メートル走っても地域では一番早かったんですよね。
M:すご~い!
S:なんか、天狗になっている小学校、中学校でしたね。
M:え~、なんか神童とうたわれていたような!みたいなことですか?
S:いやいや、そんなことはないんですが、全能感みたいなものを持ってて…あとは例えば運動だけじゃなくて例えば将棋をさす時も、なんでしょう?勝つ?あんまり負けないんですね。
M:鈴木さん、すご~い!
S:でもそれ小学生ですからね。
M:ジャンルもいろいろに渡っているじゃないですか!文武両道にイケてたって感じなんですね。
S:でもそこで、例えば苦手なものは勝負しないんです。いろんな言い訳して…
M:かしこ~い!賢い子だったんですね!
S:音楽とかダンスとかは全然ダメですからね。
M:へえ~。
S:そういうのは一切…回避して、結局自分が傷つかないようにやってるんですよね。
M:へ~、でも子どもでそういう…なんていうんですかね、そういうの機転が利くっていうのかな?どういったらいいんだろう…俺、これはちょっとやめといて、こっちはバア~ってイケるんやわ~みたいな感じ?
S:へへへ~
M:あ~関西弁だと、はしこい、っていうんですよ。
S:う~ん。
M:だからかっこ悪いところを見せないんですよ。
S:あっそうですね。はいはい。
M:あれ~どうした~ん、鈴木君イケてないわ~、みたいなことを鈴木君は見せない!
S:ははは~、そうですね~、はい。常に、モテたい、しか思ってない…
M:いや~ん。素晴らしい!
S:いまでも自分がナルシーだと息子に言ってます(笑)
M:へえ~。すごく冷静に見えますのにね。でもナルシーになるということは常に外から自分を見ている目がちゃんとあるっていうことですものね。
S:はいはいはい。あのね、仰る通り、あの~、自分の目が外にあるんですよ。
M:自己客観視がすごく徹底されている。ということですね?
S:よく誰もいないから、例えば…息子が小さいときに、あやす、とか、本を読む、とか、なんかそういう時にちょっと赤ちゃんに合わせたしゃべり方とかが、それは誰も見てないんだからできるでしょ?って言われるんですよね。
M:ふふふ。〇×でちゅよ~、みたいなことですか?
S:そうそうそう。それが結局自分が見てるからできないんですよ。
M:はあ~、なるほどね~。それはすごく面白いですね。
S:ははは~。
M:へえ~。
S:だから本を読み聞かせることも…普通に読んでる。
M:あ~、子どもからしてみたらなんか愛想ないなって感じですよね?
S:そうそうそう。はっはっは~。声音を変えるとかそういうのはあんまりできずに…                      
M:それは、そのやっぱり自分を見つめているもう一つの目が、おまえ何やってんねん!って…自分として恥ずかしいことだから?
S:そうですね、はい。恥ずかしいってなっちゃう…そんな少年期を過ごしてきたので高校生に上がると少し社会は広がってくるわけですよね。まず、一番なんてまずなくなるわけですし。
M:それまでのことがそのまま続くのは難しいですよね。高校生になると。
S:はい。そうですね。
M:こんなにできる人がいるの~!てなりますもんね。
S:もう何にもいえない…
M:うん。
S:はい。
M:それと、ごまかしが効かなくなってきて…
S:いやいや、ごまかしてはいらっしゃらないと(笑)
M:ははは。
S:なんか、先のことが考えられなくなってしまったんですね。高校卒業してからの先を自分で考えられなくなってちょっと荒れましたよね。それがまあ大体よくある話で多少グレたりっていう…
M:すごい繊細ですよね。それで多少グレたりという時期を過ごした後は?
S:何度も学校をやめたいな~ってこそっと言ったんですけれど…あの~母親については、両親は中卒なので、経済的な面でも大変で…母親に「あなたが自分で決めた学校だよね?」て言われて…さすがにこの言葉は効きましたね。
M:なるほど。
S:俺なんかが高校に行かせてもらっていて、その~高校に行けなかった母親に…すごい怒られずにそれを言われたっていうのはちょっと…やめられずに残ってたって感じです。前向きではないです。
M:やめれないな~、じゃあ行くか~って?
S:う~ん。よく高校で作文書くときに..なんか俺嫌な生徒ですよね~、事あるごとにテーマがなんであれ事あるごとに先生の悪口とか先生のやる気の無さみたいなことを書くんですよ。
M:めっちゃその職員室では話題になっていたと思いますよ。先生たちにとったら痛いところも突かれてたりして。
S:退学になるようなことはしないので…
M:はあ~!たちが悪いな〜とかいわれてたんですかね~(笑)大人のことがよく見えるんですよね。私は高校教師だった時代が結構長いんですけれど、そういうことは感じるというか…自分たちが見透かされているような感じのする生徒は必ずいるんですよね~。だから授業に行く前には「よっしゃいくぞ~!」て」気合を入れたりして…(笑)
S:でまあ、その後にある時、いわゆる悪友にちょっと映画を見に行こう!と誘われて…
M:ええ。
S:なんかその時ってよく覚えてるんですけど…必ず銀座にいくんですよね。
M:おっしゃれ~。
S:渋谷とか新宿じゃなくてなぜか日比谷とか銀座の方。
M:銀座って言われると私たち関西人からすると、高級な場所!
S:はいはい。
M:その地名を聞いたときのイメージが湧かないんですけど…渋谷とか新宿じゃなくて日比谷っていわれたらどういうニュアンスの違いがあるんですか?
S:え~と、渋谷って若者の街だけど日比谷ってもうちょっと上の世代の人が行く街…
M:大人の街ですか?
S:大人の街ですね~。で、なんか今はそうでもないとは思うんですけど当時映画館っていえば日比谷っていう感じですよね。
M:へえ~。なるほどなるほど。じゃあ、渋谷に行くんじゃなくて銀座とか日比谷に行っていた?映画を見に。
S:そう、それで要はそこで見た映画が転機になったんです。
M:わあ~素晴らしい!なんという映画ですか?
S:その映画がですね…「ファミリー」っていう映画で。
M:どこの国の映画なんですか?
S:アメリカだと思う。
M:これは借りて見んわけにはいかんね!阿比留さん。
S:17くらいで見たので…今52なんで…35年くらい前。でこれDVD化されてないんですって。
M:じゃあ今見ようと思うと見れないわけですね…
S:それでですね、大人になってからどうやって手に入れられるかな~て思っていて。
レンタル落ちのビデオテープを手に入れるしかない。
M:うわあ~
S:それで、私手に入れたんです!(笑)
M:わあ~素晴らしい!(拍手)
S:そこで私がDVDに焼きましたんでよろしかったらそちらにお送りします!
M:ええ~“!そんなんお送りするなんて申し訳ないです。でもなんか鈴木さんの転機になった映画だったら拝見せざるを得ないでしょうって感じですよ。
S:ははは。
M:映画の主演はどなたが?
S:え~とね、ほんと、わからない人です。
M:へえ~。
S:実話なんですよ、これ。
M:はあ~。
S:今、映画は見る方なんですけれども…この人は誰?って出てこない(苦笑)ような人。
M:ええ~!
S:それを見て、悪友は泣いてるし…でも私は泣くのも恥ずかしいんで…
M:あははあ~。
S:でも実はすごく泣くのをこらえてた。やべ~なあ~って。
M:泣きそうにはなっていた(笑)
S:で、その前の席に座っていた老夫婦がですね、手をつないで見てたんですね。
M:へえ~。
S:なんかそういうシチュエーションもすごい良くて…俺何やってんだろう…てですね。
それは、お母さんがガンで余命を宣告されてしまってお父さんはリウマチが何かで働けないんですね、でお子さんはすごいたくさんいるんです。10人くらいいるんですけど…でお母さんが命のある限り自分の納得のいく里親さんを探して回るんですよ。その中では施設っていうのはあんまりいいイメージでは出てこないんですよね。でも、こういう仕事があるんだなって思って。
M:それまでの鈴木少年が知らなかった仕事が映画の中にあったってことですね?
S:はいはいはい。でも当時は当然インターネットなどないのでどうやったらその仕事に就けるのか?がわからない。
M:ええ。
S:でとりあえず「福祉」ってつく大学に行きゃあ何とかなるだろうって思って…
M:はあ~!はいはいはい。でその大学を探されたってことですね?高校生の時に。
S:そうですね。もちろん勉強はできなかったのでというかやってなかったのでそこからの一年半は必死でした。一年間くらいかな?
M:巻き返して巻き返して。
S:いや~もう自力では巻き返せないので、頭のいい友達に、しつこく教えてもらって。て感じですね。
M:ふ~ん。それで大学に入られて福祉のことを専門的に勉強をされてっていうことですね?
S:そんなそんな!まず大学の選び方がまあ、失礼ですよね…俺ね…何か大学のイメージって並木道があって…
M:あははは~(大爆笑)
S:それを歩くっていう(笑)正門に入ったらまず並木道がないと大学じゃなかったんですよね。
M:あははは~(大爆笑)
S:なんかそういうところはかっこつけちゃって…なんですよね。
M:ええ。
S:ちょっと心を入れ替えて少し自分の将来もね、考えるんですけど。それがね、周りに並木道があるっていう大学がまあ学力が高く学費も高い大学なんですよね。だから入れないんですよ。(苦笑)そもそも…
M:そこに行かれたんですよね?
S:いえいえ、行ってないです。もともと福祉関係の大学っていうのは、当時少なかったので。
M:ああ。
S:はい。福祉に関係する学部っていうのがなかったので。
M:まあそうですよね。今でこそありますけど当時はやっぱり…
S:そうですそうです。今はわりと…
M:増えてきましたもんね。
S:当時は本当に少ないんですよ。でありがたいことに福祉の学部って学費が安かったんです。私立だとしても。
M:ふ~ん。
S:福祉の仕事どうせ就くんならってこともあったかもと思うんですけど。比較的他の経済学部とかと比べると全然…もう半額くらい…
M:へえ~。
S:で高校三年生の時は仙台まで行って…あっ、東北福祉大学というまあ大学があって。それに行ったんですけど…なんか並木道がなかったんですよ!
M:あは~~~(狂喜)やっぱりそれは今ちょっとわかったんですけれど、美学、ですよね。
ご自分の持っておられる美学に反しているというのはやっぱり違うんじゃないか?ていうことですよ!子どもの読み聞かせっていうのも鈴木さんの美学にはないんですよ。
S:はあ~。はははは。
M:大学といえば並木道だろう。っていうように。
S:まあそういうところ(並木道)もなく、結局は自分の学力でも入れそうなところで愛知県にある日本福祉大学っていうところに入ったんです。
M:あ~そうだったんですか。
S:そうですね、はい。なのでそこから一人暮らし。
M:ふ~ん。それって名古屋ですか?
S:名古屋から名鉄に乗って…一時間くらいです。
M:地図上の場所はなんかわかりました。そこで一人暮らしを始めていろいろ考え…
S:痩せましたね。
M:ああ~。                                           
S:なんかみんな東京の暮らしをしているもんだって思っていたんですよ。全国…
M:でもそれは東京に生まれて東京に育った人だからこそう感じることですよね、多分。
S:そうですね。
M:ねえ~。
S:失礼ですよね。
M:いやいやいや、失礼とかは思わないんですけどあの、東京の人って全く何も意識していない、地方の方もいらっしゃるじゃないですか?だから東京に行った人に聞くと…
S:すごい田舎なんですよ。ここで4年間はやれないなって思って…
M:あははは~(大爆笑)
S:痩せちゃったんです(笑)
M:え~もう日比谷にある映画館のような場所もないですしね。
S:そう!夜9時になると真っ暗になって…
M:ああ~。だけどよかったですよね?それはそれで。
S:受験がね。たまたま東京でも受けれたんですよ。だから合格してから初めて行ったので…まさかっていうこう…
M:どんな大学生活だったんですか?その田んぼしかない…
S:ははは~、ああそうですね~、やれることもなく、でもそこで初めてだと思います。自分から友達を作るっていう…そうするしかないので。生まれて初めてですね。自分から声を掛けましたね。
M:ふ~ん。
S:そこで…やっぱりプライドが高かったんですけど…多少馬鹿にされても笑って対応するようなこともしないといけないとわかってきて…
M:ええええ。じゃあそれまではなんとなく待っていた感じだったんですか?
S:声かけたことなんてないですね。高校であの面談とかでね、先生に大学受験受けるって言ったり、受かったら自分の名前が張り出されたり…だから声はかけてきますよね。
M:あはははあ~(狂喜)
S:お前なんで福祉なんだ?って。
M:お前のカラーとちゃうんちゃうん?みたいなね。それで自分から初めて声をかけて友達を作りに行って…
S:そうですね~はい。それでね、それぞれ(自分や友達が)ギターは持っているんだけどそんなに弾けない、ていうことを友達に自分から言うわけですね。それで教えてくれる友達ができたし…何だろう…周りは田んぼしかないのにアイテムはいっぱいあったというか…ギターを教えてくれる友達がいたり、一緒に免許取ってバイクに乗ったりっていう感じ。でも大学だからいろんなこと、例えば演劇とかいろいろなサークルがあったんですけど、それとは全然無関係でした。
M:はあ~、サークルには入らなかったんですね。ふんふんふん。
S:そうですね~。
M:なんかその、やっぱり愛知の日本福祉大学に行かれて今までの東京ライフっていうか東京での生活環境みたいなものから激変したところに行かれてこれはすごく大きな転機になったって感じですかね?
S:そうですね。はい。まず反対していた母親が回りのおばさま方に「息子(子ども)は一人にさせた方が絶対にいい」って言い放ってましたね。
M:ふ~ん。やっぱりこうお母さまからしたら変化があったように感じたってことですかね?
S:自分ではよくわからないんですけどね。それはあったんだと思います。

M:ではちょっとコマを進めて、その大学を出られてから東京に戻られたんですかね?
S:そうです。はい。
M:ふ~ん。
S:まあ大学では本当にそんなにちゃんと勉強してないんですけど、でもその当時の先生とは今も関係がありますし…
M:わあ~素敵!
S:それで、全然その時真面目な話を先生とかはしてないのに、当時からその先生は芸術と福祉は必ず関係性があるとずっと主張していたんですって。俺覚えてないけれど(苦笑)
そしたらどうしようもない教え子の鈴木君が今そのような活動をやってくれてたっていう…今喜んでくれています。
M:うんうん。ね~!本当に!
S:その先生が監修するテキストにもそれを書いてくれって言われて…
M:わあ~!
S:はい。で書いてます。今それは書き終わっているんですけど、また今度別の月間の福祉の本なんですがその創刊号にそれこそお二人(セレのグラフィカ)と港さんとやらせていただいた昨年度のWSについて書いてほしいって言われて書きました。
M:たしかメールでも触れてくださっていたことですよね?
S:そうですそうです。
M:ありがとうございます。
S:すごく今になって思うのは、本当によかったなっていうのはありますね。
M:じゃあその鈴木さんのお付き合いの続いている恩師の先生はもう何十年もそのようなこと(福祉と芸術の関係)を思っていらっしゃったわけですけど、鈴木さんが今、身を持って体感されたその芸術と福祉の共通点というか。あっここが関係あるだろうみたいなことというのはどういうところでしょうか?
S:最初に、新井英夫さんがやっていることがですね、何だこれ?っていうことなんですけれども…
M:ええ。
S:例えば、「人を支える」っていう言葉で。私たちはよく人を支えなさい。支え合わないと生きていけないんだよってよく言うんだけど、新井さんはそれを身体で表現している。
M:うんうん。
S:あの、本当に子どもたち二人組で身体で支え合う。支えている方がしっかり支えていないと倒れちゃうわけですよね。すげえな~って思って…私たち福祉の人間が言葉で言っている、言葉でしか言えない、教えられないことをきちんと身体で教える。しかも理解力の低い子どもたちに自然に楽しみながらやってるっていうか…それで、今はこうやって多少言葉で説明できるんですけど当時なんかわかんないわけですよ。すごいなってういうのがあって家(勤めている施設)の臨床心理士に入ってもらったんです。そこでその出来事についてその方に私に対して言葉で説明してもらったんです。
M:なるほどね。
S:身体使って、五感使って、すごい!っていうことですよね。
M:うんうん。
S:それはセレノグラフィカさんお二人も、茉歩さんも阿比留さんも本当に同じような感じでやっていらっしゃるなあって私はそう感じています、見ててわかるし子どもたちにいい意味で緊張感がなくリラックスしているのがよくわかりますね。でもっと基本的なことは…近くの老人ホームにお邪魔して…敬老の日かクリスマス会の時だったかな?その日に来て歌でも歌ってくださいませんか?って言われたんですね。そんなかわいい子は居ないのでってお断りしたんですよ、最初。
M:はい。
S:なんか、そういう方たちが思っているような子どもじゃないよ、もっと態度悪いし…と言って。
M:ええ。
S:でももう一回オファーがあったんですよ。同じ人から。もう来るだけでもいいから来てくれないかって言われまして。
M:はいはいはい。 
S:まあ、そこまでね、言われたらね、断われないですよね、地域も一緒なんで。っていうことで…まあ多少小さい子でね。女性職員が歌を教えてその時は私はギターは持って行かず(笑)カメラだけ持って行ったんです。で会場に入った途端に利用者のおじいちゃん、おばあちゃんがものすごいんですよね。「ありがとう!かわいい!」っていう…これが「無条件に受け容れる」ってことなんだなあって。無条件で存在を認めてもらうってこういうことなんだなあっていうのは…なんか、ここに連れてくることが俺がやっている自立支援の大事な部分じゃないか?ってそこで気づいたんですよね。
M:うんうん。
S:もちろん子どもたちは一生懸命歌を歌うし、上手くない歌を歌ってもらう盛大な拍手と、少しね、お菓子なども準備していただいていて…終わった後のそこを出る子どもたちの顔の表情を見たらね…そういう何か、要するにおじいちゃん、おばあちゃんや子どもたちから教わることが多いですよね。
M:うんうん。
S:これでしょう。自立支援ってこういうことだなって40過ぎてから気づきましたね。
M:それはやっぱりその…とても大切なことをお話ししてくださったんですが、子どもたちが「無条件で受け容れてもらえる」という素晴らしさであるということとか「存在を受け容れてもらう」ということの、なんていうんですかね…喜びの大きさっていうか、もう喜びっていうことも自覚がないくらい素晴らしいことっていうことですよね?
S:はい、そうです。
M:子どもたちっていうのは、じゃあまた行ってみたい!っていうことになるのか、施設に帰ってきてからも歌うとか、そういった変化はあるんでしょうか?
S:そうですね。はい。
M:そういった変化っていうのは見て取れるわけですよね?
S:はい。
M:うんうん。
S:あの~、最初、新井さんが来てくださってのワークショップも、繰り返していくと(回数を踏んでいくと)子どもたちの反応が…見てればわかりすよね。
M:あ~そうですよね~。
S:やりたいし、嬉しいし…であの、まずね、福祉バカはね、注意しちゃうんですよ(苦笑)それは駄目だよって。
M:それは鈴木さん、以前にも仰ってましたよね(笑)
S:はははは。やっぱりお二人とか港さんとか新井さんとかアプローチが全然違うので、そこからもう受け容れてくれるっていうから。それを繰り返していくと子どもたちがわかるんですよね。ああ、この人達のいる空間は大丈夫だっていう…これが教科書とか法律とかによく書いてある「安心、安全」な空間ってこういうことだよなって思うんですよ。自分たちがそれを提供しないといけないのに自分たちがそれを壊しちゃうっていうね。
Ⅿ:いやいやいや。でも何だろう…すごく難しいところですよね。子どもたちが外に出たときにやっぱり、え!なんで!て思われないようなルールのようなものを身に付けて社会に出ていくっていうこととそれと同時にゼロから何をしていても受け容れてもらえるっていうっていうこう…それをなんか自分の身体の中に持っているっていうこと。両方必要ですよね?
S:そうですね。
M:どっちかがないってことはやっぱり…偏りますよね。
S:うんうん。そうですよね。ねっ、あの~港さんとは、今はちょっとお会いできてないですけども、まあ、付き合いも あるので、港さんと二人で、二人っていうか一緒にやっている時っていうのは港さんもわかっているのでいい加減子どもがいうことをきかないと、す~ぴ~(鈴木のこと)にいうよ!って(笑)
M:わはははは~。
S:わかってるんで(苦笑)私のいるときといないときの子どもの加減が全然違うから。
M:ああ~。
S:でもそれは港さんだから何かあれば言ってくれると安心感もありますよね。こっちからは口は出さないんだけれども…港さんもいよいよとなれば「鈴木に言うよ!」て。
M:うーん。ははははあ~。
S:安心感がありますね、逆に。
M:港さんは、私たちも何度かお仕事ご一緒させていただいていてますけど、どんだけ気が長いねん!って思いますよねえ?
S:あははあ~。
M:私がこういそいそとワークの準備をしていたり、ワーク中でも今何時で何分過ぎてるとかワア~!とかなっているときに、私も阿比留さんも考えてしまうわけですよ。でちらっと港さんの方を向いたときに、まったくそんなことは考えていない様子なんですよ(笑)こう、鷹揚に構えていらっしゃるので本当にすごいなって。
S:はははは。
M:すごいよね~港さん、最後の砦、みたいな凄さがあるよな。なんて言ったらいいんだろう…なんかね、こう鈴木さんほどではないんですけど私も本を読むのが好きで、おトイレでしか読まない本があるんですよ。でそのおトイレの中でしか読まない本は何回も読んでいて、読み終わったらまたその時から半年くらいかけて読み切るんですけど、というのが論語とかよりもずっと砕けた表現がしてあるその生活者のための毎日を暮らしの知恵みたいなのが書かれている「菜根譚」ていう中国の古い思想書があるんですけど、家庭っていうのは野生がぶつかり合うものだから、外に出たら一旦それはこう中の方にしまい込んでおかないと、人と摩擦が起きすぎるから、しまい込んでお家の外に出るんだけれど、お家っていうのはある程度それを出していい場所じゃないとあの~なんていうんですかね…本来のやるべきことを外に行ってできないからそれをこうどこかではそれをできるようにしないといけないんだっていうことが書いてあるんですよ。私は原典は読んでいるわけではなくて、日本語訳がしてあってしかも斎藤孝さんがそれにこうエッセイをちょこっとだけつけるっていうすごくわかりやすい本なんですけれども…あ~そうか…家の中って野生がぶつかりあうところなんやって…じゃあ家族になるっていうことは相手の野生を受け入れてやれる人とだと家族になりやすいのかなというようなことを思ってみたり、それを受け容れられないっていうことはなかなかお互いにこうしんどかったりするってこともあるのかしらっていう…ちょっとそのくだりを読んだときに思ったんですよね。
s:なるほどね。多分そういう家庭でやっぱり家族機能が不全になって施設に入ってくるっていう子たちですよね。う~ん。
M;そうですよね。私、一人っ子なんですけど父親がすごく激高する人間だったんですね。別にDVを受けたとかいう記憶はないんですけれどもやっぱりいらんことしたら物差しで叩かれたりしましたし、母親に父親が腹立ったら畳にブスッとか包丁突き刺して(笑)今思ってみたらなかなかやるな~って思うんですけど…よく荷物持って「ほなな!」って言って家を出ていくんですよ。で私はビ~ビ~泣いて母親に「パパがおらんようになるから!」って言ったら「帰ってくるから大丈夫」って全く心配していないんですよ。でしばらくしたら戻ってきて「お前が可哀そうやから戻ってきてやったんや。だからこれはパパの本意ではない!」と言っているってことを、子どもながらに数回繰り替えされると「ああ、パパ出て行くけど帰ってくるもんやな」みたいな。
S:うんうん。
M:もう二人とも他界してるので、もう昔話にしか過ぎないんですけど。なんかあれは他所にいってはできないことやなって思ったんですよね。
S:うんうんうん。
M:だからそういうことが、なんていうんでしょう、私が育った家庭が平均的だったとも思ってないですけども、何かでちょっとした、掛け違えのようなこと、が修復しずらいようなところにまで広がっちゃうと…それを肌で感じたっていう経験のある子どもたちですよね…
S:はい。そうですそうです。
M:その、肌で感じる、ていう部分、ね。そういう感覚…
S:そうですよね。肌感ですよね。その理屈であの人がこうしたから、こう言ったから、この人はこう言っているけれどもあの人はそれを理解しない、ていうようなことではなくて、なんかその空気を毛穴から吸ってしまったって感じなんですよね。
S:はい。そんな感じですね。
M:ですよね。
S:だから何だろう。こう基本何かワークショップとかある時にどっちかっていったら僕は注意するような立場にいるようにしているんですけれど、でもそこは、そういう立場の人間がギターで参加したりすると子どもたちはすごい喜ぶ。
M:うん。そうですよね。
S:私もとってもその気持ちは「快」ですよね。それは自分が少年の時にはなかった気持ち。なんですよ。
M:うーん。なるほど。そうですよね。
S:はい。そうですよね~。それもあの~ここんところ、40過ぎてからですね。みなさんアーティストの方たちといろんな関わり方やお話しするようになったりしてからですね。自分が変わると関わっている子どもたちも変わってくるんで。
M:そうですよね!そうなんでしょうね。なんかあの~すごい的外れな例えかもしれないですけど、犬って犬嫌いな人のことをすぐにわかるじゃないですか?
S:ああ~。
M:何もしていなくても犬の方から吠えたり、構えたりっていう…犬が好きな人のことは犬はわかってて、勝手にじゃれてきたりとかするっていう…ああいうその動物特有の本来持っているような、どう接してくる相手なのかっていうことにすごく敏感ですよね。
S:そうですね。はい。
M:すっごい敏感だと思うんですよ。
S:あの~、そうやって生きてきたんだろうなって、この子たちはって。
M:それが生きる術に直結している。
S:生きる術ですよね。
M:う~ん。

M:何かコロナになってから、むさしが丘学園での日常に何かこう…小さなことでもいいんですけれど、これはちょっとコロナ前とコロナ後では変化したことだな、違うことだなって思われるようなことってありますか?
S:あっ、えっとね、まず、子どもたちがちょっとつまずいて、つまずいただけで数名が骨折したんですよ。
M:ええ!
S:はい…
M:へえ~(絶句)学園内でですか?
S:はい、中で。それがそんな大きな転び方でもないんですけど…ねえ~。
M:それってすごく不思議ですね…何だろう?
S:はい。何より骨折ですからね…
M:じゃあ本当に添え木をしたり、ギブスを入れたりしたんですか?
S:はい。そうですそうです。そのうちの一人はもう終わりましたがリハビリ通ったりしてましたね。松葉づえもついていた子もいるので…
M:どういうことなんだろう…
S:なんか…
M:謎ですね…なにか鈴木さんの思い当たられるその相互関係っていうか…そういうようなことって…もしかしたらおありだったりしますか?
S:いえ、ないですね。あの行動の自粛っていうのは…制限があって外に行けなくなっただけのことですよね。大体その骨折があったときは学校がない休校の時だったので。
M:学校に行っていなかった。体育もやっていない。
S:やっていない。
M:ふ~ん。じゃあ、運動量が激減することでということだったらっていう…
S:そうですね…激減まではいってないような気がするんですけどね。
M:ですよね。
S:でも本当になんか、それだけで骨折するようになっちゃうんだっていう…で一応あのうちの園庭(野外)はOKだったんですよ。園庭で遊ぶってことは。
M:ええええ。
S:だから外は多少は出てるんですけれど…
M:うーん。そんなん、そらじっとはしてないですよね。自粛っていうたってそんなジーっと(ゼスチャー付きで)なんてしてないですよね。
S:そうですよね(笑)
M:なんかでももしかしたら…
S:ストレスなのかな?て思ってみたり…
M:ああ~やっぱり過度な、もし無意識にストレスをためていたりするとカルシウムが不足して、みたいなことって大人でも起こったりしますものね。子どもじゃなくって、大人は仕方がないか今の時期やしっていうことがあっても、子どもはそんなに物分かりよくは捉えないですよね。
S:そうです。結構会議にも議題に上がったくらい多かったので…あとはともかく夏休みに大体その泊りのね、行事があるんですが全部中止になったので。子どもたちの過ごし方ももう全然初めてですよね。そんな行事がないっていう。
M:私たちも来月一つ幼稚園にアウトリーチに行かせていただく予定なんですけども、でも今の時期だともうちょっと見合わせる所が続出してまして、園外から外部の講師がやってきてなんてもっての外っていうのは、すごい警戒して躊躇されるっていうのはまあ自然なことだろうなあって思うんですけど、私たちが今度、行かせていただく所の園長先生は、大きい組さんが卒園するけども何にも今年行事がなくって、アルバムにも載せられるような子どもたちが楽しそうにしている写真がないっていうのがあって…ご父兄もこんなことがあって外から来てくれて一緒にダンスを踊ってくれるようなことがあるんだったらやったらいいんじゃない!っていう空気感なんですって。
S:はいはいはい。
M:だから分かれますよね?園によっても考え方がいろいろですしね。
S:そうですね。はい。
M:だからそんな考え方をされる園もあるんだなっていう…ちょっと新鮮に受け取りましたね。泊りも中止で、なんか見ました、ニュースで。ベランダにテント張って、プール置いたりしてどっか森林に行ったようなね。                                         
S:はい。
M:そういうのをお家でやってはる人もテレビで見たりしました。

M;なんか、子どもたち同士の関係性に変化がおきてるなあとかも、その鈴木さんたちのようなスタッフの方たちと子どもたちの間で何かコロナになってからちょっと違う感じになっているなあ~みたいなことは一切ないでしょうか?そんなには感じない?
S:う~ん…あの~でも何だろう、コロナか、そっか…
M:まあ、もちろんそのことだけにフォーカスってことではないですけれども…
S:ただ茉歩さんが仰ったまず外部の人、学習ボランティアさんとかも来れなくなって。
その外部の人たちとして最後までやっていたのが港さんですよね。スタジオに行くのも駄目だから逆にこっちに来てもらうっていうのがもう最後の…でももうそれもだめだよね…
てなってくると…
M:わあ~。
S:うちの施設だと看護師がいるので…立場上ね、他の施設よりも厳しいわけですよ…
M:ええええ。
S:ことコロナってことに関しては。
M:そうでしょうね。はい。
S:その人が厳しいって言っているのに、外部からの方を招くことに、さすがに、うん、とは言えないよなって言う感じですよね。
M:うんうん。
S:そういうところで大分…おかげさまでね、感染者は誰もいないんですけれども。
M:ええ。
S:そういうところはありますよね。
M:その子どもたちは、寂しいな~っていうのはあるかもしれないけれどまあまあ納得して毎日を暮らしてくれているっていう感じなんですかね?
S:ふふふ(苦笑)そうですね。う~ん…
M;別にみんな文句言ったりおねだりとかはない?
S:いや、多少はありますよね。わざわざキャンプって大きなところまでやんなくてもいいけど映画館とかは行ったら駄目だし…軒並み園庭でバーベキューやってましたね。
M:そういえばお餅つきも楽しかったですものね~。園庭がああいう風にあるっていうのはいいですね〜、体育館もね。雨が降ってても身体を動かせる場所がある。
S:はい、そうです。で、体育館を地域に貸し出しできなくなっちゃったの。
M:そうか…じゃあ使いたい放題なわけですよね。子どもたちは。
S:そうなんです。はい。一応そういう時期もありましたね。まあそれも最初は骨折が多かったりで、体育館に誰か大人がいないとなかなかうまくはいかないからっていうので事務所にいつもいるような私たちがお当番みたいな感じで。
M:見ておいてあげて、子どもたちが中で遊んでる、みたいな。
S:そうですそうです。はい。そういうの、いろいろなこともやりましたけど。うん。
M:まあでもよかったですよね、子どもがあまりにもことごとく行事が中止になって他の好きな人が外部から来ていたのも会えないから。う~ん…ってへこんじゃってストレスでその骨折とは別のような、なんか気分がふさいじゃうとか…そういうことはなくてよかったですよね?
S:まあそうですね。ただそのAくん(施設の子ども)がわざわざ電話してきて、「ワークショップまだやらないの?」って言ってきて聞いてくれたり…                                           
M:あれはね。お聞きしてとても嬉しかったですけど、いや~なかなかいろいろ開催するにはハ―ドルが高いだろうなって思って…
S:あの、Bちゃん(施設の子ども)が結構、知的にもちょっと障害があるんですけれども割と普段表情がないんですよね。無表情なんです。
M:まあそうかなあ~。
S:だから私もわざわざ、まあAちゃんはたまに遊んだりするんですけど、Bちゃんは別にそんなにあれなんですけどちょっとすれ違った時に「鈴木さ~ん!」って言ってきて「いつから始まるの?いつからできるのかな?」って聞いてきたんですよね。
M:わあ~!
S:だからね、やっぱりまだかまだかと楽しみにはしているんですよ。それを露骨には出さないんだけど、でもやっぱり自分たちのね大事な時間なんだなっていうのは…Bちゃんが言ってくるくらいだから…
M:何か意外でもありながら、でもさらっとさりげなくすれ違いざまくらいにちょっと言うかな?っていうのはBちゃんらしいなっていう感じですよね。
S:うんうん。
M:まあわたしたちもね、すっごい楽しみにして待ってますから…子どもたちにも会いたし、あんまり間は空かないで…やっぱり何かは…
S:そうですね。
M:したいっていう…もちろんそういう気持ちはあるんですけどね…まあまあまあまた、ね、気長に待ちます。
S:そうですね。何かあのよかったのはほんとにあの職員も…
M:緒方さんもね!
S:緒方さん以外の職員もできることがあったら手伝いたいと言ってきてくれて。
M:嬉しい!
S:はい、嬉しいですね!
M:なんかあの発表の日のことを昨日の事みたいにね(笑)
S:ははは。まあ、やった子(昨年度経験した子)は続けるっていうか、そういう気持ちでいるっていうのがありがたいですよね。
M:本当に。
S:まだ終わりじゃないっていうね。
M:ほんとですね。始まりですからね、去年は。
S:ね。
M:ええっと、大丈夫ですか?水分とか飲まれなくて…
S:適当に、ここにあるので大丈夫です。
M:私たちも去年の今頃なり、冬なりに全く予測しなかった、社会がこういう、まあ新型コロナウィルスっていうものの感染が否応もなく存在するっていうその社会に暮らさざるを得なくなっているということがありますけど、この社会の現状、または今後に対してその違和感でもいいですし、発見でもいいですし、鈴木さんなりにどう捉えられて、あ~これはこういう事だなってことに何かこう符号性を見つけたりとか…どんな事でもいいですので何か教えていただけますか?
S:はい、あの~、まずはこのオンライン、ZOOMっていうのをコロナになって初めて必要に迫られて…まあ、私が実は研修を一つ頼まれていて、こんなになっちゃったから研修はないんだなって思っていたら、ZOOMで、て言われたって感じで。
M:ええ。
S:それは確かに、今回も東京と京都で対談させていただいて…研修の時にも思ったんですけれど、実際の会場は都内だったんですけれど実は熊本の方も参加していて…
M:あっ、その研修に?
S:ええ。私はしゃべる方、講師の方なんですけども。
M:その方熊本でお話しされるのを聞いて…
S:物理的に距離は改善されるんだなっこれで、いいことなんじゃないか?って思ったんですけど…う~ん…割とちょっとふざけて、話する時にちょっと、何でしょう、こう笑いを取ろうとするんですよね、私が。
M:はいはいはい。
S:だいたいアドリブは効かないので大体研修て前もって原稿を作ってあるんですけれど。
M:素晴らしい!はい。ふふふふ~。
S:その、ちょっとクスッって笑ったりするのがZOOMはわからないですよね。
M:ZOOMわかんないですよね!なんかクスッて声が出ていなくってもちょっとクスッってなったなっていう身体の波だった感じや空気がわかんないですよね。
S:わかんなくってスベッてるんだかどうなのか…ぜんぜんわからなくて不安になってきて。
M:それスベッてないんですよ!でもZOOMを飛び越えてまで鈴木さんに伝わるのなんてよっぽどこんなふうに(大きなゼスチャー付きで)しないといけないじゃないですか?そんなふうにはしませんよね。
S:なんかね、そういう、なんだろう?こう匂いじゃないけどちょっと空気ってやっぱり伝わんないものがあるんだなあって。情報を共有したりする分にはいいんだけれど…ちょっとやっぱり人間臭さってないなあって感じるところはありますよね。
M:ほんとそうですよね。全く同感です。
S:今自分がこだわっているのが進学の支援だとか就労の支援とかももちろんしますけどまあ元々その、人としてね生きていくようなところ、生きていけるようなっていうところを支援していきたいので、それはね、オンラインでは不可能だなあって思ってますね。
M:うんうん。
S:だから今港さんとでもそうだしお二人もそうだろうけど、ライブ的な活動がすごく制約されて大変だろうなあとは思うんですけど…
M:はい。
S:子どもとの関わりはライブとして関わってもらってそれで…さっき茉歩さんも仰ったようにね、皮膚の、こう肌感というか、そういうのって何だろうなあって。それができない以上、私の自立支援は進まないなあっていうとこですよね。
M:うんうん。とてもよく想像ができますね。あの~なんですかね~そんなに…単純じゃないんですよね。人一人がいて、もう一人いてその間で交感されていることっていうのは、単純に口に出してこうしゃべられてる言葉の応答だけに集約されないじゃないですか。
S:そうですよね。はい。
M:今日は本当に画面ですけれど、でも私はやっぱり鈴木さんの今日の赤いTシャツが綺麗だな~っていうようなこととか、こないだお会いしていた時と髪型の感じがちがうな~とかいうようなこととかで、なんかこう全部受け取りたいわけですよ!
S:はいはい。
M:だからほんとはもし対面していたらもっともっといろんなことをキャッチするんでしょうけど…まあそのコロナ、コ                                       ロナってあまり騒ぎ立ててその面ばかりを強調しようとは思わないですけれども、小さい子どもたちが…なんていうんですかね…身体でいろいろなものを、目にしているものじゃないものでも感じてキャッチするっていうことが鈍らないでほしいなとは思います。
S:はい。なんかそれがその…ダンサーだったり振付家だったりという方たちの凄さ!施設の子どもたちってすごく緊張しているんですよね、身体にやっぱり緊張感があるんだけれど、お二人と関わっている間の子どもたちは緊張感がないですよね。リラックスしてて…
M:わあ!嬉しい!
S:そういったことは私にはできない!(苦笑)すごいな~って。
M:いやいや。
S:ああいう感じだったらきっと骨折も少ないんだろうなって思うんですよ、うん。
それは、オンラインだと、そりゃちょっとな~って、難しいですよね。
M:今ちょうどダンスもオンラインのワークショップとかオンラインの配信とかいうのがどんどんなさる方も増えて…
S:そうですよね。
M:でも、リアルでやっていた、ライブでやっていたことをそれがその機械的に減少してるとか不可能だから、じゃあそのままオンラインにスライドさせましょうって、スライドさせて、これでできましたってことではないですよね?
S:はい、そうですよね。
M:まあ、距離を超えられるというか、いつでもこう東京にいる鈴木さんと京都にいる私たちとがお話しできたり、鈴木さんのお話しを研修で熊本の方が東京にわざわざ行かなくってもお家で聞けたりっていうのはものすごくいいことだとは思うんですけど、なんかそれでいいじゃない?っていうふうになるのは違うなって気がしますね。
S:ほんとにそうですね。
M:あの、達成されることが別のこと、とまでは言い過ぎですけど違う種類のことだなって。
S:はい。
M:そう思ったりしますよね。あと、え~と、もう一つだけお尋ねしていいですか?
S:ええ。はい。
M:新しい生活様式っていうようなことが言われて、まあいくつか項目が示されて、それがいろな人に対してこう…なんていうのかな…こうしてください!っていうふうに…まあ別にだれもが全員がキャッチできているわけではないでしょうけれど…ああいうことってどういう風に思われますか?
S:あの~、実はあの…やっぱり子どもと親御さんの面会も原則今できないんですよ。
M:う~ん。
S:でもなんていうんですかね、それがどうしても必要というか、比較的早い時期に家庭に戻すっていうようなケースとかですね、その面会とか外泊とかを繰り返していかないといけないので…
M:そうですよね。
S:それでこっちのは衝立てがあるんですよ、面会するときに。あとは、生活棟の方で食事をするのにも衝立てを立てて…なんか立ち食い蕎麦屋みたいな感じ…
M:ああ~。
S:京都って立ち食い蕎麦屋さんって?
M:ありますあります(笑)
S:ああいうなんかね~、向かいの人は知らないおじさん、みたいな感じ。
M:知らないおじさん!一緒のタイミングで天かすに手を出してしまうような(笑)
S:そうよね~食事…そうですよね~。あんまりいいイメージは持てないですよね。どうしてもね。(苦                                           
笑)
M:あんまりいいイメージが持てなくって…
こうやってお話しさせていただくのに先駆けて考えていたんですけれど、このず~っともやもやもやもやしているんですが、このもやもやの正体はいったい何なのかな?なんであの新しい生活様式がこう当然のごとく浸透するかのようにテレビでしゃべっているのを聞いたりしてても、どこか、「うんうんうん」とこう思えないのは何故か?と思ったことを少しだけ突き止めたというか、もしかしたらこういう事かもかなって思ったのが、多様性に関して介入されてるっていうようなことに対する違和感かなと思ったんですよ。
S:はあ~ん。
M:だから、その生活様式なんかっていうのは基本的にもちろん多様であってよくって長いスパンの間にはそれこそ何か生活を大きく変えるような、電化製品が出てきたとか、機械が田植えをしてくれるようになった、といういろいろなことがあるとは思うんですけど、自発的に変わっていく…まあ感染症というものがもたらしたといえばそうなんですけれど、なんか一斉にこういうふうに生活をするようにならなきゃいけませんよっていうようなことに対しては、最後までNOと言わないといけない仕事もしているし、その身体がそのことによって影響されていくってことを本当に注意深く見ないといけないのかなって言う気がしていて。そういう違和感かな?もしかして?っていうのを思ったんですね。
S:はい。あの~、茉歩さんとこう共感持てる…多様性っていう単語は私もずっと大事な単語なんですけど、今の社会のあれ(新しい生活様式)はマッチしないというのはあります。
M:どことなくこうギクシャク、やっぱりしてますもんね。
S:そうですね。それと主体性がそこにはない、存在してない。多分お二人には子どもたちも意見が言える、こうしたいとかいえる。あれすごい大きいんですよね。ほんとにないので。そこに正解、不正解なんてなく、すべてやっぱりそこは受け容れてくれることをわかっているから主体的に言える。それをようやく少しずつお二人と関わる中でやっていけて…
またこれもね、いいですよね!
M:今とても深いことを教えていただけたのですが、多様性と主体性はつながっているってことなんですよね。つまり多様性を奪われるってことは主体性も認めてもらえない。ということにもつながる…すっごい深いことですよね。ありがとうございます!
S:いえいえいえ、なんか…
M:だから何かしらどこかにこう致し方がないけど、こう許しきってはいけないんだぞ!っていうような、がんばっとかなあかんねんで!ていう感覚がどうしても拭い去れないですね。
S:うんうん。
M:阿比留さん、何か鈴木さんにお聞きすることはありますか?
A:ありますよ。あの、施設を退所された子どもたちとも関わりがおありだと思うんですけど、今も関わりがある中で、その子たちがこのコロナになってから何か相談してきたりとかはありますか?
S:もうね、今私の主の業務はそれになってますね(笑)
M:そうなんですか!
S:はい!いわゆるアフターケアーなんですけれども…
M&A:ええええ。
S:一つは、経済的にちょっと困窮しているっていう…アルバイトになかなか入れなかったりっていう…
M&A:なるほどね。
S:それでまあいろいろ一緒に付き添っていったりして働く先とつないだりっていうのがあります。それとね…まあなんていうんでしょう?それこそお金の問題だったりするのでそれほど重くはないですけど…あともう一つは、これは特別なことじゃないんですけど、あの、女の子がやっぱり性産業に流れてい                                          ってしまう…
A:ああ~!
S:今連絡を取っている子は、セクキャバにいて…さらにデリヘルっていってましたかね…
M:え~!
S:20歳の子ですね。まあ高校中退しているんですけど。まあちょっと…なんていうかな…
それ自体をただ否定するわけにはいかないんで難しいんですよね。俺、なんでそれ否定できんのかなあ?っていうのはあるんで。ただ本人がまともな仕事がしたいんだって言った時があったので、じゃあ、ね、市役所の女性相談窓口に行こうって一緒に行ったりですね、行くんだけどやっぱなかなかそんな例示されたもので本人納得いくものでもないし、その給料、稼いだお金っていうのは当然私よりも多いので…それは相変わらず継続しているっていうところですとか…これはコロナだけじゃないんですけど、あなたそれは(感染する)リスクは大丈夫なの?って聞いています。お客さん、その相手がもしコロナでね…。夜のお仕事だからホスト遊びもするんですって。
A:ああ~。
M:それは聞いたことがあります。それでバランスが取れるんですってね。
S:そこでのリスクも当然あるんですけれど。それらをちょっとね…相談っていうかまあ話を受け止めてあげたり、あとはこれは…まあコロナとは別に関係ないとは思うんですけど、自殺未遂、ですね。
A:はい。
S:未遂で済んでるんで行為が継続するケースもありますね。必ずしも学力レベルとは関係なく。。。孤立感に見舞われるということが一番彼らを追い詰めるというか。。。
A:はあ~!
S:だから私がZOOMで話を聞くくらいで、風俗に勤めている女の子にも、まあ言えることは、「死なないで」。もう職員としてではないですよね、一人の人間としてもし死んだら、俺が困るからっていう事を伝えるというくらいですよね。でむさしが丘ではまだそうやって死んでしまった子はいないんですけれど、私が以前勤めていた施設では私が担当していた子も30前に自殺をした子もいますし…このことは今お話しした子たちにも伝えています。だから「ちょっと嫌だなあ~、俺より先に死ぬのはなあ~」ってもう理由も言えずただ嫌だなあ~って言うくらい…それは伝えています。それがこうコロナとどう関係しているのかどうかはわかんないですけど、う~ん。
M:コロナと何が因果関係みたいなものがあって、これはコロナのせいやとかこれはコロナのせいじゃないってことも今だからわかることともうちょっと時間が経たないとわからないことっていうのが混ざっているような気がするんですね。
S:うん。                                           
M:それで、自粛の初期くらいにコロナ離婚とかいうのが増えて、
S:あはは。
M:なんか干潮になったら潮が引いてこんな岩の突起があったということが二人で分かったみたいに。それはだからコロナが来たから早くに離婚したけど、そういう問題が二人の間にあるっていうのはいつか何かの機会に露呈し衝突は起きるんじゃないかみたいなことをまあまあ言っていた人がいて、テレビでね。ああ~なるほどな~って思ったりはしてたんですけど。
S:あとね。やっぱりこの3月に退所して、4月に大学に入学した子がですね、学校が始まらないんですよね。だから友達がいないんですよね、はい。
A:やっぱりね~、かわいそうに…
M:今年大学の一年生になった子はもう本当に100年に一回くらいの気の毒なね。だからキャンパスライフに憧れて出てきたのはいいものの大学に入構もできない、対面授業が受けれない、クラブやサークルにも入れない、バイトもできない…よくそれでまあ…私の知っている子でそれでもう退学した子もいますけど、これで自分は何をもって大学生だといえるのかって。どう実感すればいいのか?っていう…実感はできないですよね。
S:ね、やっぱりその…自分を認めるにしたって何するにしたって他者の存在っていうのは絶対必要で、先ほど茉歩さんが仰っていた応答さえないってなったらそりゃあちょっと厳しいですよね。
M:なんか自分の経験で本当に恐縮ですけれども、私もたった一つだけ大学の授業を持っているので、それが今年は遠隔授業になって一方的に配信するんですね。で大学は授業でしゃべっているように、学生が読んだときにそう感じるように、講義をしたように配信テキストを書いてくださいということなので、読んで90分間に収まるように、それを毎回課題としてレポートをだしますよね。でそれに対するフィードバックをやっぱりちゃんとしてあげたいとか言うたら偉そうなんですけれども、そういうやり取りがないと学生もジーっと家にいて課題を書いたものを出したんだけれど、先生が読んだのか読んでないのか?それについてどう思ったのか思ってないのかみたいなことがうんと希薄だと、余計にトーンダウンするだろなあっていう。
S:はい。
M:なんかその、鈴木さんが仰ったやり取りするっていう、直に会ってなくっても私が書いたことを相手の人が読んでそれについてこういうことを言ったっていうようなことって最低限大学生の今の状況だと必要なことですよね。
S:そうですね。
M:どんどん孤立感が増していくっていうか。みんな誰しもが感じるだろうなあって。
S:わりと、こうなってまあ暇じゃないですよね(苦笑)退所者の方とか手厚く何かしらこう支援がありますね。
M:鈴木さんがプロフェッショナルとして行なっていらっしゃることっていうのは心理学とかのカウンセラーとかとは違ってもっと具体的にこうするといいんだよっていうような今後どうできるか?っていう事に対するアドバイスをしていくっていうようなお仕事ですよね?そのただ悩みだけを聞くっていう…その、これがつらい。とか聞くお仕事ではないですよね?
S:まあそうですよね。
M:まあもちろんそれも聞いてあげてらっしゃるとは思うんですけど、じゃあそしたらどうしたらいいのか?っていう事をやっぱり一緒に考えてくれるような人がいるってものすごく心強いことですよね。
S:ええ。そうですね。まああの正しい答えは私も出せないし、出せないです。一緒に考える、一緒に悩む、いう事ですよね。
M:う~ん。
S:それをよくあの~、特に心理職の人は「伴走者」って説明しますね。我々のような職員のことをね。                                           
M:ええ。
S:私も自分の大学でちょっと学生さんにお話しした時に「伴走者」なんですよ~て。そう話しをしたら聞き間違えた子がいて、その子は音楽の「伴奏者」って。
M:ははは~。
S:奏でる方で、俺はそっちがいいやって思って…それからはそっちの、奏でる方の「伴奏者」にしてます。(笑)
M:へえ~~~!
S:すぐ間違えるし自分が突っ走ってしまう事があるんですけれども(苦笑)まあ「伴奏者」で。
M:う~ん。走る方を思い浮かべる人の方が少ないですよね。
A:まあ私たちのようなアート系はね。
S:アート系!?(笑)
A:そうかそうか。では退所している人の子のほうが一人きりの時間が多いからなかなかそういう意味では鈴木さんのような方がいらっしゃるというのはかなり心強いって「ことですよね?
S:そうですね。あの~本来であれば、不安は不安なんだろうけど、友達ができて、まあまあ夜更かしして友達と飲みに行ってとか…ね。深酒して体壊すみたいな話ってよくある話ですけれども今回のこれはね、ちょっと…想像できない…ですよね。う~ん。
M:ねえ…
S:なるべく少しでも連絡は取って…
A:鈴木さんの方からも?
S:はい、もうしてます。ただあの~なるべく生活を一緒にしていた担当職員が連絡は取ったほうがいいとは思いますので。
A&M:うんうんうん。
S:でもそれでも間に合わなければ私からね、何か連絡はしていくっていうのはあります。
A:なるほど。鈴木さん含めて職員のみなさんっていうのはかなりこう…今もお話しにちょっと出ましたけど、コロナ禍になったが故に逆に忙しくなっているという感じですかね?
S:そうですね~はい。結局、何だろう、あの~違う形で仕事は増えて…でも健康的だなって思う職員は、なんか急に車を買い替えてみたり(笑)
A&M:へえええ~!
A:この時期にだからこそ!ですね?
S:そうなんです。この時期だからこそなんか10万円入るしみたいな(笑)
A&M:うんうん。前向きにね。
S:ちょっと健康的、そういう職員の方が健康的だなって。
M:うんうん。すごく大事なことやと思う…もうなんかあの~
S:なんか、私なんかねその10万円は家のローンに。
A&M:ああ~。
S:そっちにいっちゃうので楽しみも何もないんですけど(寂しく笑う)
M:願ったり叶ったり?踏んだり蹴ったり?っていうね(苦笑)でも家のローンにね。
S:そういうのとかあの~なんだろう、この機会だから何かをっていうね。でちょっとある時期はなるべく出勤しないで済むんだったらしないっていう時期があったんですよ。
A&M:うんうん。
S:だから事務所にいる職員の数も少なくっていう…
A&M:う~ん。
S:で公共交通機関は使わない、自転車かバイクか車で来る、ていう条件があったときに、もちろんリモートで仕事できる人はいいですけれど、栄養士は無理だったりですね。その人達は条件はもういいから                                         って…なるべくそういうのを逆にちょっと利用して、うん。
もう記録とかはあとでいいから勤務あがれたらすぐあがれ、みたいなのがあったので割と現場職員もどこかに行くことはできないんですけどそれはなるべくうまく利用して、とか。
M:う~ん。
S:だからまあ健康的かなっとは思いますね。
M:そうですよね。うん。
A:せっかくできた時間を自分のために有効に使うというか。
S:そうですね。
M:でも当然だよね。そっちに切り替える。ていうか。なんぼでも暗くマイナスの方に行こうと思ったらそっちの方が簡単にね、行けますものね。
A:今多いんでしょ?特に海外では、コロナ鬱、みたいなものが。
M:ああ~。
A:すごくたくさんいるってね、うん。
S:ええ。
A:なるほど~。それはちょっとつらいお話しですね。
S:ねえ、ほんと、港さんとか、なんか大丈夫かな?って思ったり…
M:港さん、どうされているんですかね?普段から謎やから(笑)
S:ふふふ~。
M:どうなっているんだろうっていう…
A:スタジオも貸せないからね。
M:なんか港さんと活動をご一緒されていたソシエテコントルレタのベーシストだった大村太一郎さん…
S:ああ!太一郎さん!はいはい!
M:今四国にお住まいの。あの方と作品作りしているんですね。昨年から。
S:ああ、そうなんですか!へえ~。
M:で徳島のあわぎんホールで浄瑠璃の三味線を弾く太夫さんと大村さんのベース(コントラバス)とダンスさせていただくっていうので一か月に一回ですけどフェイスタイムみたいなので連絡を取り合ってるんですけど。
S:そうなんですね!
M:やっぱりでもあの、コンサートの予定とかは飛んだって仰ってましたね。港さんともご一緒にされる予定だったようです。だから「港さんと会っておられないんですよね~」って聞いたら「ええ。会ってないですね~、何してるのかな~」って。
S:あははは~。
M:「そうですよね~」て言い合って(笑)
S:それなりにさっき茉歩さん阿比留さんが仰ってたようにyoutubeにアップして少しやってる、ご自分のスタジオで、鈴木彩香さんというヴォーカリストの方もライブ活動ができないから、レッスンとかもその、オンラインでやってる。とは言ってましたけどね。
M:音楽の方は結構ね、オンラインレッスンとかいうのは割とできるってね…
A:うんうん。
S:なんか自分たち福祉の職員の方がまだあんまりそこは影響を受けずにやってられますよね。ただそのライブ活動とライブ感ありきにしている方たち、アーティストの方たちは本当に大変だろうなって…
A&M:いやいやいや…
S:あの、竹原ピストルのライブもなくなっちゃったので。
M:え~それはもう残念ですね~!生を聞きに行こう!って!あれ以降、鈴木さんに教えてもらったので…                                         
S:ええ。
M:生でききたいよね~。やってないんですね?
S:4月5月は一日に一回絶対youtubeにアップしてたんです。
A&S:へえ~!
S:一曲一曲を。俺はそれを毎日見るの楽しみにしてたんです(笑)
M:ええええ。で現在はどうなっているんですか?現在も続いている?
S:それは5月いっぱいで終わって。
M:竹原さんどうされているんですかね?
S:えーとね、なんか自分で調べたわけじゃないですけど…やっぱりライブハウスが大変なことになってるじゃないですか、経営が。
M:ええ、大変なんですよね。
S:そのライブハウスに行ってお客さんはなし、無観客でやってそれをお金を払ってオンラインで見るようなことを今はやってるみたいですね。
M:でもやっぱりとりあえずそこに活路を見出しますよね。熱気ムンムンでみんなぎゅうぎゅうになってライブっていうのがいつになったらできるのかの保証がね。ないですもんね。
A:あの~えっと、そうですね。鈴木さん自身は特に、自粛生活とかを余儀なくしないといけなくなったわけですけどもその時期に何か身体的にでも精神的にでも少し影響があったりしましたか?
S:あの~、週に一回くらいですね。自転車に乗って通勤してます!
M:自転車はいいよね。
A:うん。
S:前に一回挫折してるんですよ、それやって。
A:ああ~
M:自転車通勤ですか?
S:そう。すごいこう、完璧にやろうとしちゃうので。
A&M:ああ~。
S:要は…
A:なるほどね~。
S:それをもう医者に読まれたなって。
M:鈴木さん、もう完璧主義者やからゆる~くでいいよって(笑)
S:はい、そんな感じで(苦笑)「無理しない!一週間に一回くらいでいいから」って。
M:うんうん。
S:そう思うとね、続きそうな感じはしますけどね。
A:完璧にできないってことで、もうやめよう…ていう事になるんですか、いつもは?
S:そうですね。はい。
M:例えば一週間きちんと続いて、その次にちょっと何かでつまずいてしまったら、もういいや~になる?
S:もういいや~になります。
M:それめっちゃわかります。
A:続けていることがモチベーション?
M:だから、ずーっと続けてきていてメモとかつけてても、なんかの拍子に2、3日飛んだら、次するのがすごい億劫なんよ。もう元に戻すのが。ね!ありますよね、そういうの。
S:ありますね。はい。そうですね。でなんか昔からそうで…でもギターは港さんと知り合ったことで唯一続いてますね。ギターもつまずくわけですよね。でもいつでも尋ねることができるっていうのがあるので。そういうのはなんか安心できますよね。だから「いいや」って続けられるみたいな感じですかね。
M:ギター続けてくださいね。すごい素敵やから!
S:ありがとうございます!(笑)
M:公演しましょう!また、ね!子どもたちも交えて。
S:私はまた竹原ピストルと一緒に共演を…ずっと言い続けてますんで(笑)
M:ほんまに素敵ですから!
S:なんか、そういうのもあって今はちょっと気持ちは楽にしながら…
A:うんうん。
S:自転車も週に一回でいいやっていうような感じでやってます、はい。
A:そうかそうか、それはなんかよかったけどいいっていうのはあれやけど…あはは。
S:あはは~。あっ、たばこもやめたくなかったんです。
A:やめろっていわれたんですか?お医者さんに。
S:歯医者さんが怖くて…
A:ええ~?今時、珍しい!
S:すごい怖いんです。歯医者さんが。なんでここ行っちゃったかなって。でたばこをやめる意思がないから、「あの~無理だと思う」って言ったら怒るから「わかりました。禁煙外来に行きます。」て言って…もう他力です。自分でやめようなんて思ってないので禁煙外来に通って…でそうすると今度禁煙外来に行っちゃったもんだからきちんと薬をくれるので医者に言われたことをきちんとやらないととやるんですよね。当然だと思うんですけど一週間後に行ったら「何本吸いました?」ってお医者さん聞くわけですよ。だって吸うなっていったじゃんって。「吸うなって言われたら吸わないよ」。って思うんですけど、やっぱりそういうものなんだって思って…そもそもやっぱり何本か吸っちゃうものなのかなって思ったんですけど吸うなって言われたらできないですよね。                                         
A:へえ~すご~いそれは!
S:あの…やめれました。
M:すごいな~それは。すごい意思の力ですね。
A:僕は無理でしたよ(苦笑)僕は自分はやめれるようにって自分で人に宣言して取り組んでみましたが…言うんですよ「俺はたばこをやめる!吸い続けていたら踊れない!」って。
で言った次の日から隠れてこそっと吸ってしまい…もうバレバレなんですけどね。
M:なんか、缶コーヒーのカンカンの中にぷかぷか吸い殻が浮いていて「これは何?」みたいな。でもやめれましたよね。
A:そうそう。やめようと思うとやめれない。で今死ぬか、たばこを吸うか?どっちかを選べ!って言われたらタバコ吸う方を選ぶ、だからやめるわけではない。究極のときには吸う。ていう風に考え方を楽にした途端に吸わなくても平気になって…もういまではまったく吸わなくなったって感じですよね。しかし、お医者さんの言葉でしかも自身の意思でやめたってすごいですよ!!僕は無理だと思う。
M:素晴らしいね!!
M:ところで今日お話を伺って、愛知の時に恩師の先生に出会われたのは大きかったのだなって。
S:はい。
M:なんていうんでしょう、こう自分が適性があるかないかって多分自分よりも自分じゃない人が見た方が割とわかるんじゃないかなって言う感じがするんですよ。だから本当に鈴木さんに優れた適正があるっていうことをたくさん数いる学生さんの中から、その恩師の先生はこつにはある!てその時にピカ~!って見えたんだと思いますね。
S:う~ん。
M:でもそういうことってあると思うんですよ。
A:あると思いますよ。
M:もちろん、下手の横好きが功を奏して何かになるってこともあるんでしょうけど、客観的に見てくれる人に見えることってあるんだろうなあって思って、うん。よくだからその先生がね、鈴木さんにこういう仕事をやってほしいってね。
A:日比谷に映画を見に行ってくれてよかった(笑)
M:そう!「ファミリー」の映画も大きかったし…そう!だから引き寄せて来るんよ、自分に。
A:まあ、今いろいろ新しい生活様式とかソーシャルディスタンスとかまあいろいろ僕個人的にはこういったことには不自由を感じるんですけど…普通に人と接することができないっていうね。
S:ええ。
A:この新しい生活にしていこうという動きがあるじゃないですか?それの違和感みたいなものは隅地さんがさっき言ってましたけど…それがこうなんていうんでしょうね…まあコロナが仮に終息したとして、このような生活様式が残っていくのか?いややっぱり人間本来の生活に戻っていくのか?そのあたりはどう思われてます?
S:あの~、元に戻ってほしいって言う願いですね。でそれはあの~元々こうなったからではなくて、例えば家族も、核家族じゃなくてもっとおじいちゃん、おばあちゃんが一緒にいるような家族形態、もっと昔に戻ったほうが人間いいんじゃないかなって。実は施設も小規模化してるんですね。
A:あ~そうか。そうですね。
M:へえ~。
S:小規模化して、地域分散型、なるべくグループホームにっていうのとか、あとは、入所期間が短いんです。家に帰すとか…今は特にですね(コロナ禍で)。なんか間違ってないか?っていうちょっと危機感を感じているので、もっと変な話、昭和に戻ろう、みたいな。
M:なるほど。                                          
S:あの~、そのくらいに一回、なんでしょう?平成じゃなく昭和までくらいは戻ったほうがいいんじゃないかなっていうのがあって。私はやっぱり学校というのはあんまり好きではないんですけれども…
A&M:うんうん。
S:結局ゆとり教育失敗して今の小学生は大変なんですよね。5時限6時限ばっかりで。なんかそれも福祉の世界もそうなっているんじゃないのって。どっかが失敗だった、間違いだったねっていうのがいつか来るのかなってとか。もちろんこのオンラインとかいろいろな部分はあるにせよ生活自体は元に戻る、よりはもっと昔に戻ったほうがいいなって思います。
A&M:うんうんうんうん。
A:あ~でも嬉しいなあ~。
M:うん、嬉しいね。
A:なんかね、道なんかで倒れてる人を助けることができない世の中って嫌じゃないですか!
S:嫌ですよね~。
A:触れない、近づけないわけですからね。
S:そうですよね。
M:例えば、子どもに触わってもらうと、その子どもさんのいろんなことがこう接触を通して伝わってくることってあるじゃないですか?だからそれがやっぱり禁じられるっていうのは何か一つこう回路を分断される感じがあるのと、なんかそういうことを通して言葉で説明しなくっても、触れることによって通じ合っているものっていうのがやっぱりなくなるっていうのはやっぱり寂しいことですね。
S:そうですね。ねえ。うん。なんかそれも、うん、証明できるっていうか、証明できるっていうチャンスっていうのをですね、アーティストと私たちは貰っているわけなので何とか証明したいなっていうのはありますよね。
M:そうですよね~。
S:あとは自分が子どもが生まれた時ですかね。40歳の時ですけど。その時にほんとに振り返ってですね、こんなろくでもない奴が…自分の40年間って意外にイケてたなあって、幸せだったんだなあって思うのは、自分の行いは酷いのにって思うんですけど、人に恵まれたなって…それはほんと思いますね。今でも人に恵まれてこうやって生かされているんだなあって…常に思ってるので。やはりこの出会いを大切にしたいし、施設の子どもたちもいろんな大人に…その中で私みたいな変な奴がいてもいいだろうしって思ってやってますし自分の息子にもそう言ってます。なんかその出会いが、人との出会いに私は支えられて生きているなって、ほんとに。それがね、ほんと、実際に触れない世の中になってしまったら私自身がそうは思えなくなっていく…恐ろしいなあって思いますよね…
M:そうですよね~。
S:自分一人で生きてきた、なんて思ってたらね、怖いなって思う。
A:そうですよね。ほんとになんか悲しいことばっかりじゃないですか。
S:そうですよね。
A:感染した人のことをね、石投げてみたり、責め立てたり、ねえ…
むしろ、大丈夫?って労うならまだしもわかるのに…そういう人は自分一人で生きてきたって思ってはんのかなって思ったりしますよねえ。
S:はい。う~ん。
A:人に迷惑をかけずに生きてきたんだ!とか思っているのかしら?とか思っちゃう。
M:う~ん。
A:なにか変な方向に、人そのものがいっている気がしてしまいますよね。
S:ええええ。
A:みんないろいろとストレスはあるとは思うんです。人間が本来そうしたいって言う生活をさせてもらえてないわけですからね。そういったことからのストレスが知らず知らずのうちに溜まっていっていますよね。
S:うんうん。
M:やっぱりあの~感染したくないっていうのもそうなんですけれども何かを警戒している身体っていうのは絶対どこかが硬直してるから。
S:あ~
M:身体をやっぱりほぐしてあげるっていう機会が必要だろうなって思うんですよね。安心している人の身体って硬直していないんですよ。
S:はいはい。
M:それがうっすらとでも溜まっていくと身体のどこかはこう、なんていったらいいんだろう…いびつになるっていうか…そこは危惧しますね、身体に付き合ってしている仕事ですから。あとやっぱり昭和に戻るってお話しの時にちょっと思っていたのが、鈴木さんの「お話しがうまくぐるっと円環していって最初に戻るなって思ったんですけれど人に恵まれてね、やってこれたっていうような、それってあるところで全能感を手放せることじゃないですか?
S:そうですねたしかに、はい。
M:小さいときに持っていたっていう全能感を手放すチャンスだし、自分がこうだと思っていることが見えるのはちょっと恥ずかしいなあっとかいうような事を人との出会いの中でひとつづつ手放していってはるんやなっていうことかなって。

M:何かこういう事をお仕事の中で、お仕事の中だけでなくていいんですけれども、こんなこと面白いかなって何かご興味を持っておられるような事ってありますか?
S:え~と、やれてなくって、これからっていうのはそんなに正直ないんですよね。あの、今のお二人とやってきていることがもっと広げたいっていうか、いろんな可能性、本当に楽しいんですよ。それが。でなんかね、やってみてそれがまた他の人がいいなっ、やりたいなって…もうそれだけで…もうそれはだからもう仕事か仕事じゃないのかよくわからなくなってきているし。
M:それは同感です。ほんとに楽しめることっていうね。ですもんね。
S:だからなんか俺すごくラッキーな人間だよなって思いますよね。
A&S:あははははあ~。
S:勤務で来てるのになんかいい思いさせてもらって、時にはギターでね、参加させてもらってみたいな。
M:うんうん。
S:でなんか全能感を捨てれたことで支えられてると、今度は自分が自虐的ながことが言えるんですよね。
M:ほうほうほう。
S:だからすごく楽になりました。身体が。
M:身体がね。
S:すごく。はい。それはなんか、周りの人からも言われますね。
M:そうですか。
S:自虐的なネタを言えるようになってから、開き直ってるよねって。すごい楽なんです。かつて自分は緊張して生きてきていたのかなあって思うんですけど。
M:かつてですね。
S:そう、だから今やりたい!っていうこと、新しいことをやりたいっていうのはないですね。今の立場も変わりたくないですよ。今の職場でこの立場をずっとやっていたいですね。
M:わかりました。なんかすごいお話を!ありがとうございました!

                                                   終わり

実施日:2020年8月30日(日)

【対談者プロフィール】


鈴木 章浩(すずき あきひろ)

1968年5月29日出生、東京都荒川区出身、東京都東村山氏在住。他者に恵まれ、4つの児童養護施設を転々とする。
現在、社会福祉法人 二葉保育園 児童養護施設 二葉むさしが丘学園勤務。
施設の子どもたちにとっては「伴奏者」であり続けるため、オリエンタルで、ハイブリッドな自立支援コーディネータ―を目指している。
日本福祉大学時代の恩師と現在も「芸術と福祉」について、連携している。
音楽家でピアニストである港大尋氏に師事…歌うたい、ギター弾きである竹原ピストル氏とのセッションを現実のものにするために鋭意、努力中…
バイクとギターを愛する52歳、夢は駄菓子屋のオヤジとして、世の中の子どもたちを見守り続けたい。二児(双子)の父親、高血圧、悪玉コレステロール、尿酸値、血糖値と戦う毎日。


photo:Ai Hirano
隅地 茉歩(すみじ まほ)

 セレノグラフィカ代表。同志社大学大学院文学研究科修了。日本古典文学の研究者から転身、関西を拠点に国内外で振付家、ダンサーとしての研鑽を積み、1997年阿比留修一とセレノグラフィカを結成、以後代表を務める。
繊細な作品創りと緻密な身体操作を持ち味とし、観客に多様な解釈を誘発する作風で作品を創作。デュエット作品を基軸に、ソロやグループ作品の振付も手がけ、フランス、イギリス、韓国、オーストラリア等のダンスフェスティバルでも作品を上演。
近年は、公演活動にとどまらず、地域の人々が参加する作品を多数創作する他、500を超える教育機関にアウトリーチを行うなど、全国を駆け巡る。TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD2005 にて、グランプリに当たる「次代を担う振付家賞」受賞。京都精華大学非常勤講師。

※本事業は「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市⽂化芸術活動緊急奨励⾦」の採択事業です。