2017年8月9日(木)月齢16.7 / 魔物と天使

長距離移動の車中でブログを書くことが多い。先週後半、沖縄から戻った翌日がまた東京で、行きの新幹線の中でブログをと思ったら、何とカバンの定位置に携帯がいない。充電状態のまま家に置いてきたことに気づいてポカンと口があいた。たまにやってしまう。携帯忘れはどうにも手出しできないので観念。お世話になった方を偲ぶ会が巣鴨の白山で開催され、帰宅するまでたったの一度も携帯を手に取ることがなかったが、私などは長じてからも、こういう期間が長くあったのだと新鮮に感じた。却って車窓からの景色を念入りに楽しんだり、行き交う人の身体をマニアックに観察したりして、それはそれで楽しんだ一日だった。

さて、8月に入って既に一週間が過ぎ、台風一過ということもあって、夏の日差しは眩しさを増しているようだ。ひと月ほど前の、地域創造の高知ラボあたりから、呼吸器系の持病を引きずり、先月末には「地声どんなだったかなあ」と思ったりしたものである。それでも、かつて止まなかった雨はない、という言葉のように、ようやく復調、沖縄遠征が転地療養を兼ねたかのようになって地声を取り戻した。ありがたい。

先月にはウェディングパーティーで踊るという、お祝い事の本番があった。神戸にあるダンスボックスにお勤めの岩本順平さん友理さんご夫妻の手作り感満載のパーティーだ。会場は新長田にあるふたば学舎講堂。屋内なのに、新郎新婦のアイデアでガーデンパーティーのように設えられている。たくさんの緑、たくさんの風船。たくさんのお友だちの手によって、そこはまるでどこかの楽園のようだった。ダンスボックスには国内ダンス留学という長期講座が毎年開講されていて、今年で6年目。その3期生である藤澤智徳さんがパーティーでのアトラクションのディレクションを任されていて、お声がけ頂いたという訳だ。阿比留や私と一緒に踊ってくれたのが、同留学1期生の中間アヤカさんと、5期生の関中美紅さん。この4名という世代の違うカルテットで臨むこととなった。リハーサル期間が短く回数も少なかったが、その分逆にはずみもついて、二曲プラスαの演出込みで仕上げていく。

当日は会場中央の櫓に鎮座されている新郎新婦のところに闖入する4体のzombieとして前半を、そして後半にもう一度、聖歌隊のような演出で踊った。200人を超えるお客さんたちで賑わう中、魔物と天使に扮して少しドラマ仕立てのパフォーマンスを披露。ふだんの舞台活動とは一味も二味も違う。藤澤さんの細やかなサポートの中、新生活をスタートされるお二人をダンスで祝えたことが何よりも嬉しい。

この時の興奮が良き温度で尾を引いて、私たちはチーム名まで決めてしまった。wild&mild。
略称ワイマイ、である。お互いのことを知ってはいても、こんな形で共演しなければもろ心に踊るという機会もなかったかも知れないと思うと、ご夫妻がつないで下さったご縁に感謝の上限もない気持ちである。新婚早々にしてすでに功徳を積んでおられるというものだ。

通常の舞台公演での約束事が取っ払われた本番は、新しいハードルと、忘れていい掟とが混在する。この稀有な経験を糧に、チームワイマイは活動継続の所存です笑。

具体的な誰か、その人の人生の、とても具体的な何かのために身体を供することができる幸せは深い。

(茉歩)

写真は、リハーサル会場からパーティー会場への道すがらで見つけた花。花嫁の白です。