「夜のことば」3の初日が開いた。築300年の日本家屋、伊丹市立伊丹郷町館。奥には酒蔵を擁する元蔵元のお屋敷。邸内には広い土間があり、天井も高く常に風が吹き抜ける造り。敷居をまたいで中に入るとすうっと外温よりもひんやりした空気に包まれる。
居住部分は一階に畳の部屋が5部屋、そして板の間。ふだんは襖や板戸の多いところを特別に取り払って見晴らしの良いように設えさせて頂いている。昨晩は限定30名満席。この建物の歴史の中で初めて観客の皆さんが座敷に上がられた日だった。
作品の鑑賞のために四角く(変形もある)区切られ、情報が得やすくなっている通常の劇場空間に比べて、もちろんのことながら場そのものに備わっている情報が多い。しかも年月を重ねているから発散しているものも深い。濃密である。いわゆるアクティングエリアとしている場所も、部屋ごとに、もっと言えば立つポイントごとにエネルギーの流れが異なっていて、身体に与えてくる影響が少しずつ違う。
「夜のことば」シリーズの1.2回目の会場だった西陣ファクトリーGardenも同じ。何かが棲んでいる場所だった。主人、とでも呼ぶのがふさわしいのだろうか。姿が見えるわけでも声が聞こえるわけでもない。けれども感じる気配。そこへ上がり込み、身体を供する。お客さまとともに御膳を囲む体験のようだ。何かをともに食らう。交換する。
今日と、明後日、あと2回。場のもつ磁力と親和しかつ刺激し合い、記憶に残る上演としたい。
昨日は本当に関西内外からご来場下さいましてありがとうございました。実に嬉しく、改めましてお礼を申し上げます。また、本日お越しの皆さま、心よりお待ち申し上げております。
(茉歩)
写真は、帳場から奥の間を見渡した景色です。