新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市文化芸術活動緊急奨励金を受けた活動として「身体のことば~振付家の視点から~」を実施しております。
今回は、芸術に対する理解と関心をお持ちで、社会的弱者に寄り添って仕事をされている3名の方(藤岡保さん:北九州市身体障害者福祉協会アートセンター・センター長、西田尚浩さん:京都市東山青少年活動センター シニアユースワーカー、鈴木章浩さん:二葉むさしが丘学園(東京都小平市)自立支援コーディネーター)とオンラインで対談、その内容を文字起こししてウェブ上に公開します。
その第一弾として藤岡保さんと隅地茉歩の対談の全文を掲載させていただきます。分量は多いですが、読み応えのある充実した内容となっております。ご一読いただけましたら幸いです。
セレノグラフィカとしての創作やワークショップ活動の中で現場を共にし、私たち自身が大いに刺激を受け、視野を広げて頂いたお三方に改めてお話を聞く機会を設けることにしました。コロナ禍に関しても、マスコミで取り上げられている論調とは違う視点と見解をお持ちだろうと思うので、独特の視点ならではのお話を聞き、その充実感を広く市民の方々と共有できればと考えました。
身体表現を専門とする者として、今回のコロナ禍の影響(経験として示唆を受けたことを含む)を考察し、新しい生活様式ということが提案されている中で、今後の創作や活動に生かしていくと同時に、広くその成果を社会に還元できる方法を探し、試していきたいと思っています。
日々ネット上では、膨大な情報や言葉が飛び交っています。新型コロナウイルスの感染に関しても同様です。それらの情報群の利便性や即時性の恩恵に預かりつつも、やがて消費され忘れられかねない言葉とは異なる、時間が経過した後にも残る言葉を掘り起こしておきたいと考えるようになりました。それを、居住地や時間を問わず読める形で公開し、読んでくださる方たちの感覚を刺激し、何かを思考するひとつの材料になれば何よりです。
今回の感染拡大によって起きた生活の変化は身体感覚に対しても大きな変化を迫っています。対談をお願いする3名の方は、就労しづらい若者たちや、障害をお持ちの方々や、親元を離れてクラス子どもたちなど、身体に対して、より繊細さが求められる現場に立っておられる方ばかりです。そういう方々がこの期間に経験され考えられたことをお聞きし、こちらもそれについての感想を述べ、考えを深めてコラムにまとめます。全てウェブ上に公開していく予定ですので、これがきっかけで意見交換の場が作られたり、ネットワークの広がりに繋がっていけば幸いです。
今回の試みは、身体を見る、扱う、感じる専門家である振付家の視点からのことばが、少しでも何かの刺激やきっかけになれば、という試みです。対談は今後不定期にでも継続していく所存です。
隅地茉歩
身体のことば~対談➀
藤岡保 × 隅地茉歩 (全文掲載)
隅地茉歩(以下M):久しぶりですね。
藤岡保(以下F):そうですね。半年ぶりですね。
M:現在のお仕事につかれたきっかけを教えてください。
F:あ、はい!考えたらそんな話、していませんでしたね(笑)
M:そうなんですよ!何年もご一緒できていたのに。実は実は…ですよね笑
F:実は、大学の時に、障害者施設を慰問で廻るボランティア活動に入っていたんです。慰問の内容は、障害者施設でレクリエーションしたり、音楽をしたりと入所者の方との交流を深めることが目的でした。それこそ、大学の時なんで、今から30年くらい前です。その当時って今みたいに福祉が進んでいない時代だったから、施設がものすごく閉鎖的で、自分も初めてみる世界でした。ただ、活動に参加したのはよかったのですが、実は当時、僕は楽器も弾けなくて…(笑)
M:うそ~
F:人前で歌うことも苦手だったんですよ…(苦笑)
M:へえ~
F:で、この活動がきっかけで、福祉の活動に興味を持って、そこで出会ったのが、実は、永松さん(レンコン)と岩井さん(みりこ)です。
M:え~じゃあもう18歳の時から?!
F:いえいえ、大学の時だから21歳の時からで、その時から二人のことは知っていましたね。
M:うわあ~!(驚)
M:そしたら、岩井さんやレンコンさんたちも若かったということですよね?
F:若かったですね。
M:うわ~、そうなんですね…なんか、ご縁を感じますよね。
F:そうなんです。だからこれがきっかけで障害のある人たちとのお付き合いが始まって…それから、大学を卒業してSEの仕事に就いたんです。
M:何の仕事ですって?
F:あ、SEというのは、システムエンジニアです。
M:システムエンジニアね。
F:でも3年半働いたんですけど、何となく自分にあってないなあって思って、たまたま、当時、ボランティアの活動場所が今の仕事場だったので、そこから声がかかって、今ここで働いているという感じです。
M:ああ、そうなんですね。じゃあえーと…今の法人に入職して27年くらい?
F:ですね…もう25年ですね。はい。
M:うわ~、もうなんかベテラン中のベテランですよね。
F:いやいや、ぜんぜんベテランじゃないです。
M:へえ~そうだったんですね~。
F:もう本当に雑談なんですけど、25年前、平成7年に今の職場に入ったんですけど、実は、入籍したのが、今の職場に入る前の無職の時にだったんです。(笑)
M:わ~ふふふ。
F:今でも思うんですけど、よく考えたら無職だったんですその時…ははは…。それでもよく相手の両親が許してくれたなあ~って思って。。。
M:うーん、なんだかあの~そういう度量の広いご両親を持っておられるお嬢さんっていうね…同じケースで、村上春樹さんがそうですよね。
F:あっほんとですか!
M:村上春樹さんも、初めの頃仕事がなくて、でもご両親が…結婚していいよって理解を示した上に、そのご両親が猫が大嫌いやのに、蕁麻疹が出るくらい嫌いやのに、村上春樹は猫が大好きで、飼ってもいいよ。ていったそうで
F:へえー。
M:だから、藤岡さんが素晴らしいからですよ。
F:たまたま、まあ今の嫁さんが一緒に活動していた人だったので。
M:ああ~そうでしょうね。なんとなく想像できました。
F:はい、だから岩井さんも永松さんも、実はうちの嫁のことは、よく知っているんです。
M:はあ~なんかもう、ある意味、人生を一緒に、歩いてこられたというようなお付き合いなんですね。
F:はい。
M:いや~阿比留さん、なんかそれに関して質問なんかない?大丈夫ですか?
阿比留修一(以下A):慰問で行かれていた施設に入ろう(就職しよう)と思ったりはしなかったのですか?
F:それはなかったですね。
M:現在の法人に入られたきっかけは?
F:たまたま職員が一人辞められて、その時に、僕がちょうど、仕事を変わろうかとボランティアの仲間に話をしていたのを、当時の上司が知り声をかけてくれたのです。ほんと、タイミングがあったからですね…
M:大丈夫ですか?阿比留さん?
A:はい、大丈夫です。
M:そしたら。えーっと、まあその中で私たちも藤岡さんに出会えるっていう、大きなことがあって、その前に私たちは劇場(北九州芸術劇場)と出会ってるんですけど。
F:はいはい。
M:で、2回ですよね。レインボードロップス注1の公演を2回ご一緒してきて、それもこれ以上ない幸運なことなんですけれど、レインボードロップスのプロジェクトの…2回目の公演から半年くらい時間が経ったじゃないですか?いま改めて振り返って、とても印象に残っていることとか、まああの時にもしっかりお話しもしてパンフレットにもなりましたけど、今改めて、予想できなかったことが…始まってたのかなコロナは?まあ、こんな風になるなんて思ってなかったっていうこの半年くらいを経て、今振り返ってみられてどんな感じですか?レインボーのプロジェクトを振り返られて…
F:あ、はい。正直な気持ち、こんなに続くとは思わなかったですね。まあ、それこそ高橋さん(元北九州芸術劇場舞台事業課)とセレノさんが、うちの事務所に最初に来られた時は、当時、松本が担当だったんですよね。
M:そうですそうです。
F:松本が担当で、一年目にうちの実行委員会のメンバーと作品展示会場で一緒にWSをさせてもらって、翌年から「この雰囲気でやっていこう!」と思っていた時に、僕に変わったのですよね。
M:ええ。
F:だから高橋さんからしてみれば、担当者が変わってショックやったんやないかなって思ってですね(笑)せっかく松本さんといい感じにできたのに!って多分思ったんじゃないかな(笑)
M:まあ~どうなんでしょうね、劇場の中でも担当が変わったり、多分プロジェクトを立ち上げたんだけども年度の変わるときに主なご担当の方が変わられたり…って結構あることみたいなんです。だからまあ「変わるの?」って一瞬思ったかもしれませんけど藤岡さんにお会いになって「あ、これは大丈夫!」ってすぐに思ったと思いますよ(笑)
F:あ~そういってもらえるとうれしいですね。
M:いや~絶対そうですよ!うん!もちろん松本さんのことも大好きだけですけど、藤岡さんが引き継いでくださって、これだけきちんと続いたなとすごく私たちは思っています。
A:横からすみません!あの時はどこにおられたんですか?
F:あの時は、まだ高齢者のデイサービスを担当していました。それこそ、法人としては、10年以上前から北九州市障害者芸術祭という障害のある人たちの文化活動の支援を目的に活動していて、僕は、スタート当日から関わっていました。ちょうど、セレノさん達が最初にWSをされた時の前後2年間だけ、法人の芸術分野の担当から外れていたんです。
M:でそのお留守だった年に、私たちが行った(声をかけた)んですね?
F:そうです。
M:へえ~。
F:それからその翌年から、法人として障害者芸術文化の分野に力をいれようと専属の部署を立ち上げその時の担当に私がなったということです。
M:あ~、なるほど!じゃあやっぱりタイミングがすごくよかったんですよね~。
F:そうですね・・・
M:タイミングってすごく大事ですよね。こういうことは。
F:大事ですね。
M:2月の時の、公演の後の座談会でも、だれかが、何か一つが欠けていてもやっぱりこんな風にはならないという…いましみじみと、あのくだりを思い出しました。
続くとは思わなかったのに続いた理由というのは何か思い当たられることはありますか?
F:やっぱり僕が一番感じたのは、参加された障害のある皆さんのそれぞれの個性の素晴らしさは勿論ですが、ここまで続いてきたのは、今振り返ってみても、これまでお話しした通り、セレノさん、芸術劇場の皆さんとの「人との繋がり」、「出会い」が一番かなって思いますね。
M:ええ。
F:やっぱり僕は北九州芸術劇場の担当が高橋さんだったから、演出、構成がセレノさんたちだったから、そして、セレノさんたちが北九州に来れないときに、イマタカさんがいたから、出来たレインボーだと思います。
M:そうですそうです。
F:それと、レインボーのダンサーのみんなを見ても思うんですけど、号令をかける役割の人がいたり、決めていないのにいつのまにか車椅子のメンバーのサポートに入ったりとか。。。そうそう、お菓子をメンバーに配るお母さんがいたりとか(笑)
茉歩さんが、今回の開催した公演でキーワードにされた「家族」という形がいつの間にか、みんなで出来上がってきたのかなと思うと、仕事の立場や障害の有無を抜きにして、やっぱりこのメンバーだからこそ、長年かけて一つの家族になれた感じですね。そして、レインボーという家族の中でいつのまにか、役割分担が出来上がってきた感じがしますね。
M:なんかその~同じ役割を、変な言い方になって恐縮なんですけど、取り合ったりとかいうことはなくて…
F:そうそうそう!
M:あっ、そういう風にしてくれんだったらじゃあ私はこっちにまわるわ~みたいな、なんていうんでしょう…うま~いパスっていうか、トスっていうか…そういうのがうまくできていましたよね。
F:う~ん、出来ていましたよね~。だからそこで障害のある人たちは自分が持っている、もともとの個性の部分というものが出せている反面、障害のない周りのメンバーがうまく、そこのフォローができているのかなって。たとえば例に挙げると、イマタカDanceFamily注2の皆さんなんて、ものすごく、その部分を敏感に感じられる皆さんだし、その辺のバランスがやっぱりできていたのかなっていう思いますね。
M:そうですよね~。なんか…なんていうんですかね…本当に誰かが何かをこう仰ったり、されたりしたことでみんなが悩んだり、あ~どうしたらいいんだろう…って落ち込んだりっていうようなことが、充分想定はされるじゃないですか。
F:はいはい。
M:でも、不思議とそういうことがあまりなく…なんか…私が鈍感で気が付いてなかったところがあったんだとは思うんですけど…なんだろう…軽いことは多少はあったのかもしれないですけど、みんなで笑い飛ばしながら乗り越えて…こんな風になれるっていうのがその、藤岡さんの仰ってくださったような「家族性」ってそういうものですよね。
F:うんうん。
M:なんかあるところでは野生を出す場所、だと思うから…家族ってね。だからそこにはいろいろな意味での暴力性みたいなものが含みこまれるはずだと思ってはいるんですけど、でもそういうことを小出しに交換もしつつ、受け入れる間口を相手に対して広げていくというようなことができるみんなだったのだなあっていう感じなんです。
F:そうですね~。
M:ブレンドの良さ!ですかね。
F:ですね。でも今、一緒に何かを作りあげるとか、ひとつの目標へ向かって行くとか、意外と仕事以外ですることがないじゃないですか。ただ楽しいだけではなくて、目標があることで一体感が生まれるんですよね。そして、その中で、セレノさんがダンス公演として、一般の人たちに見ていただける作品への導いてくれるからこそですね。
M:そうですね。
F:そのバランスのようなものは、セレノさんがいらっしゃったからこそ出来た事ですね。
M;レインボードロップスの時のようにワークショップみたいな現場に出られることって、他のお仕事でもあるんですよね?
F:今は、仕事の中でワークショップはレインボーだけですね。
M:では、藤岡さんのお仕事は、事務所のあの場所にいらっしゃってお仕事されていることが多いんですかね?
F:え~と、事務所の中でやる仕事だけじゃなくて、作品展の開催などの仕事もやってます。
M:作品展?
F:北九州市内のカフェや喫茶店、そして画廊喫茶に、足を運び、障害のある方の作品を見て頂き、作品展開催の協力をお願いをしています。そういった面では結構外に出かけています。あと、市内の商店街と連携して、アーケード内に障害者アートを飾ったりとか、障害のある方のステージイベントを一緒に企画したりとか、地域とのつながりの中で様々な障害者アートの普及啓発活動をしています。
M:そうですか。その中でWSそのものは少なかったとしても、障害をお持ちの方と交流してるっていう…いろいろお話しされたり、お仕事を一緒に進めていったり…というようなことはあるわけですよね?
F:ありますね。はい。
M:それでそのような中で、このコロナ以降に変化したこと、例えば「あ~こういうことはコロナより前とは違ったことになったよなあ~っていう、もちろんマイナスのことだけではなくていいんですけど…何かおありですか?
F:もちろん、レインボーに関しては全く集まれなくなりました。
ただ今後のことを考えたときに、視覚障害の方ってもともと「触る文化」なんです。それこそ点字にしても指先で情報を得たり、外出するにしても、手引きが必要だったりとか、ソーシャルディスタンスが難しい障害の方になります。
M:ええ。
F:その中で、ある美術館の方が言われていたのは、「触る作品展」ができなくなったと言われていました。実は、私たちも障害者芸術祭の中で作品展を開催するにあたり、今後、「触る」っていう部分に関して、どうコロナの時代の中で開催していくのか、考えていかないといけないなぁと思っています。
M:レインボーの中でも、例えば、れんこんさんのような視覚障害をお持ちの方々が感じておられることとか、こういう風に思われるんだなとか、こう今の変化をどんなふうに受け入れて、というかどう感じていらっしゃるのか?みたいなことも藤岡さんが生で接しておられて何かお気づきになったりするんじゃないですか?そのあたりはいかがですか?
F:そうですね。でも実際にもし、国が言っているような新しい生活様式の中でやろうと思ったら難しいですよね。ソーシャルディスタンスを取ろうと思っても、それが難しい障害の方はいます。それでも生活をしていくためには、先ほどのケースのように視覚障害の方には、手引きが必要だし、ヘルパーさんも必要なんで。障害特性に合わせた「新しい生活様式」を作っていくしかないのですね。
そして実際、コロナ過で感じたことはですね。。。。。
M:どんなことでもよいので教えてください!
F:はい。今回はオンラインでの対談ですが、僕らって、僕と茉歩さんと阿比留さんと3人で今話していますけど、これって自分たちさえ日程があえば自由に調整して会うことが出来ますよね?
例えば、ダンスを踊りたい、習ってみたい。楽器を弾いてみたいとか、自分で選び、時間も決められますよね。
でも、ヘルパーを使わなければならない、岩井さん、永松さんは、レインボーのWS以外に個別練習したいってなってもヘルパーさんと調整しなければいけなかったですよね?
M:はい、そうでした。
F: 障害のある人たちの中で福祉サービスを使っている人って、コロナに関係なく、基本的に生活していく中で、行動や時間に、今までも、そしてこれからも余儀なく制約されているのが現状なんです。このコロナを通じて感じた部分でもありますね。
M:今、藤岡さんの言った、僕らというのは?
F:はい、障害のない人のことですね。例えば、今日〇×に餃子を食べに行こうと思ったらいけるわけじゃないですか!
M:そうですね、そうです。
F:でも福祉サービスでヘルパーを利用している障害のある人たちは、〇×の餃子が食べに行きたいとなったら事前にヘルパーさんを予約して「この日に行きたい!!」って約束しなきゃいけないですよね。それも、対象者ごとに、ヘルパーが使える時間にも制約があるのです。
M:自分がこうしたいということに制限がかかることを、藤岡さんや阿比留さんや私とかは、障害をお持ちの方々が普段から体験しておられるようなことを、コロナになって初めて体験したということですよね?
F:制約という部分ではですね。
M:それはすごくよくわかります。
F:自分がその気になればいつでも出来るわけじゃないですか?さっきも言いましたが例えば、餃子を明日食べに行こうと思ったらいけるわけですよね?
M:はい、いけますよね。
F:でもやっぱり岩井さんにしても永松さんにしても、行こうと思ったらヘルパーさんと調整しなければいけない。ただ、今の社会状況からすると、介護に関わる方の人材不足や、国の予算等、様々な問題がありますが・・・・・
M:今のお話の中に出てきたんですけど、障害者の方たちとのお仕事、の文脈でなくてもよいので藤岡さんご自身がコロナの感染後の今の社会っていうか、もちろんこれから新しい生活様式とか言った提案も私たちは受けているわけですし、まあ、今後実際にどうなっていくかということはまだ一週間先の感染状況もわからないというような中で、おそらくある程度の期間は手探りが続くんだろうとは思うんですけど、そんな中で何かお感じになっておられることってありますか? コロナ感染が存在している社会の現状とかあるいは今後に対して思うこと…なんでもいいですし…さっきお話しくださったことって発見だったと思うんですけれど、改めて実感していることというか…ご自身のことでなくとも、何か町で見聞きすることとか自分に入ってくることでもよいですし…
何かお感じになっていることってありますか?
F:はい。感じている事として、このままコロナ前の状態に戻るには時間がかかるということですね。
となると、戻るまでの間に何もしない、何もできない、というのは時間がもったいない感じですね。
でも、戻ったら今まで通り、レインボーのメンバーとハグをしながら、みんなとダンスをしたいですね。アートセンターでは、今のコロナ過の中でも出来ることを考えて、会えなくても、家で踊れるソーシャルディスタンスをイマカタさんに考えてもらい、それを収録したDVDを現在作成中です。会えない時こそ、ステーホームで出来る事をアートセンターで考えながら現在取り組んでいます。
M:そうなんですね!
F:コロナの関係で、ステージイベントが開催出来ない。勿論、その前にステージに向けて練習するワークショップも出来ない。練習もワークショップも本番もできないのなら、できる方法として考えたのが、今回のDVD作成でした。
本当は、ユーチューブに動画をアップして提供する事も考えたのですが、レインボーのメンバーって超アナログじゃないですか!お母さん方も含めて(大笑い)となると…やっぱりDVDにして皆さんに配布するのがいいのかと思って・・・・
M:なるほど!
F:ワークショップをしなくても、皆さんと共通のダンスが出来る。そして、この秋に開催する障害者芸術祭事前PR事業のステージで、イマタカダンスFamilyに出演していただいて、その中で、今回のダンスを踊る計画なんです。
M:はあ~。
F:イベント当日は、ほかのお客さんにも一緒に踊ってもらいたいので、イマタカさんにダンスのレクチャーをしてもらう予定です。
M:なるほど!
M:そしたら今、お話ししていただいたことをおさらいさせていただくと…DVDが出来上がったらそのレインボーのメンバーのところに送られて…
F:はい。全員に送ります。
M:でそれを見るわけですよね?
F:はい。
M:イマタカが作ってくれたダンスをイマタカダンスFamilyが発表するときの最後の一曲だけがどういう振付か?ということがDVDに録画されていて、それをレインボ―の人たちはお家で見て練習ができて。その成果(本番)というのはいつなんですっけ?
F:10月3日(土)で、北九州市小倉北区にあるチャチャタウン小倉で開催します。
M:ああ、チャチャタウンですね。あの西鉄バスの行先に書いてあるやつですね!
F:そうですそうです!
M:あの~観覧車が最初に見えるあの…
F:そうそうそう!そこですそこです!
M:そこでイマタカたちは生で本番を踊り、そのフィナーレの曲をレインボーの人たちは(振付を)知っていて…でレインボーのメンバーはお客さんとして見に行ってそのタイミングになったら踊るってことですか?
F:はい。そして会場は野外ステージなのでソーシャルディスタンスも可能です。
M:野外なんですね。要はオンラインで参加するということではないということですよね?
F:はいそうです。
M:オンラインということでは全くなく、お客さんとして行って…なるほど!すごくよくわかりました。
F:どうしてもオンラインというのが厳しくて。レインボーの皆さんはアナログ人間が多いので(苦笑)やっぱり、直接会えるのがいいですね。
M:本番でその場で観客席でその時に来ているお客さんと一緒に踊るってことですね?
F:そうです そうです!
M:それは素晴らしい!お客さんが急に踊りだした!てやつですね?「それ、いつ仕込んでたん?」みたいな。
F:ただイマタカさんに気をつけてほしいとお願いしているところは、あくまでも他のお客さんの通行の妨げにならないこと、そして、ソーシャルディスタンスだけは気をつけてほしいとお願いしています。
M:イマタカたちが踊って、ここに今ゲストがきてくれています。ステージに上がってきてください!というようなことではなく観客席でしかもソーシャルディスタンスを保ったままってことですね!
F:そうです!要はレインボーのステージを作るのが目的ではなくて、レインボーのみんなが集まって、お客さんも含めみんなで踊れる場所を僕らが提供できたら嬉しいです。勿論、それはコロナ対策も含めて、野外でソーシャルディスタンスを保ちながら、なおかつ、会場全体で一体感で盛り上げることが出来る内容で考えてみました。
M:へえ~、それはすごく画期的ですね~。
F:いや~、画期的かどうかわかりませんけど(笑)
M:というのも、どうしてもネガティブな方に思考が行きがちっていうか…このような社会的な感染の状況下だから、あれもできない、これもできない、もちろん、あれもできない、これもできないっていうことになるのは事実なんだけれども、その中でどういうことができるのかということを考えていくというのはすごい大事なことだと思ってるんですよね。さっきも仰ったように、例えばもしこれが10月までで終わるんだ…今の生活が…いうことだったら…9月30日に終わって10月1日からもとの感じになるんですよって、ハグしてギュウしてベタベタして踊れるんですよ、ってことだったらもう9月30日まではおとなしくしておこうかなって思いますよ。ただ、ほんとに無期限のことなので。想像しているだけじゃないですか。なんか私、春頃は夏には大体落ち着くだろうと予想していたんですよ。
F:僕も僕も。
M:その頃の予定も全部秋以降に倒したりしてますから(苦笑)
いつ終わるかわからない、とただ手をこまねいているんじゃなくて、やれることをどんどんひとつづつ具体的にしていくっていうんですか… みんなが生で集まれる、身体を伴って集まれる場や空間を作ろうということを…もう、さすが藤岡さんと思いました!
F:いえいえ。ただやっぱり僕の役割がそこなのかなって思っています。だからさっきの話で、家族じゃないですけれど、レインボーという家族の中で、その場を作るのがアートセンターの役割なのかなぁって思っています。
M:そうですね~。それはなんていうんでしょう、あの~今年できないから、まあ今年できなくなっていることもあらゆるジャンルで数限りなくあるとは思うんですけど。
F:ありますよね。
M:ね、ありますよね。できないことを何とかこう、ひっくり返すというようなことじゃないかもしれないんですけど、できない時間を無駄にしないっておっしゃいましたよね?もったいないって。
F:はい。待つ時間がもったいない。待って先が見えるんだったら待っていいと思うんですけど、ずーと待ったまんまだったら、それこそ無駄な時間になるので。何か出来ることを計画した方がですね。
M:そうですよね。まあ、ワクチンが開発されて、この今の生活の…なんていうんでしょうか、全員がどこに行くにもマスクして幼稚園や小学校に行ってもお友達に触れなくて…というようなことが続かない方がいいわけじゃないですか。
F:そうですね。
M:続かない方がいいと思っているんですけど、新しい生活様式というのが示されて、なんていうんでしょうね、私もダンサー仲間とか実際ワークショップをやってる子で小さいお子さんを育てている人とかもいるんですけど、幼稚園に参観に行ってみると、お友達のところに近寄って行ったら、「ダメ!離れて!」とか先生に言われて。一人一人の場所を四角いエリアでバミリがしてあって…フランスの映像でも見たことがあるんですけどそのエリアの中にぬいぐるみと女の子だけ、ボールと男の子だけ、みたいにしてそのエリアから外には出たらダメというのをやっていて…先生たちは、こういう風にしても子供たちはすぐに慣れて、楽しく遊べるんです。って仰るんですけど…私はやっぱり怖いですね…
F:うーん、はい。
M:そういうことが浸透していくことにどうしても抵抗感があるんですよね…そのあたりはどんなふうに感じられますか?
F:はい。そうですね。たしかにやっぱり直接会って話しをするとか直接会って触れ合うことによって伝わるものっていうのは特に子どもさんに関してはものすごくあると思います。だから問題はそこをクリアするものがあればそれが一番いいと思います。僕も田舎育ちなんで、普通に田んぼの中や山の中を走ったりして生活してきた人間なんでね。
ただ問題は感染(コロナ)とのバランスというか…どこまでならいいのか?どこまでなら子どもたちを制限をせずに遊ばせることができるのか?という部分がこれから一番難しいところかなと思います。コロナ時代とか抜きにして、人間が育っていく中で必要なものってありますよね。
例えば、今言ったように、大勢で、屋内で遊べないなら、屋外で遊べる場所を考える。外で近づかなくて遊べる場所探す。等ですね。
あと、もう一つ今後、各携帯電話会社が5Gといった新しい通信サービスを始めるにあたり、より高速でサービルを受けれる時代がきますね。そうなってくると違った形での作品づくりが可能になってくるかもしれませんね。セレノさんのように全国を廻っている方々も、新しい通信サービスの中できることってこれから増えてくるのではないかな…とちょっと思ったりします。
M:うんうん(頷く)
F:あの、プライベートで、この前、ZOOMを使って遊んでいたのですが、同時に会話する時に、タイムラグ(遅れ)があるんですよね。この遅れがあると、楽器でのセッションが出来ないのですが、それも出来るような時期がくるかもですね。
M:う~ん。なるほど。F:全国各地で、例えばキーボード弾く人は東京に在住、北海道在住は、ドラムを叩く人、って、そんな時代がくるかもですね。そうなってくると、本当は(直接会って)ハグしたいんだけれどね。もしかしたら映像の技術の進歩とかで、オンライン上でのレインボードロップス公演もできるかもしれないですね。
例えば360度カメラで映像を映したり映像の専門家とコラボすることによって公演ができたりとか、そういう時代が来るかもしれません。そうなってくるとセレノさんと北九州のレインボーとの距離というひとつの大きな「壁」もなくなりますね。
M:そうですよね。
F:僕がさっき話しましたけど、コロナによって自分たちが制限させられた。でも障害のある人の中には、制限をされた生活をこれまでもしてきた話をしましたけど、もしこれが、オンラインでレインボードロップス公演ができれば、岩井さんと永松さんは誰にも遠慮せずにできちゃうかもですね。
M:そうですね。餃子屋さんに行きたいっていうときにヘルパーさんが入ってくれて…がなくなる…
F:そうです。そうです。ただ今の話は全障害の方向けではないのも事実ですね。もしかしたら知的障害の方からすると、オンラインへの理解がなかなか難しい部分もあるかとは思いますね。
M:うんうん。
F:でも逆に言えば、そういう新しい生活様式で新しいダンスを考えることによって、今まで壁があった人はそれがなくなるかもしれないですね。すべて正しいわけじゃないんですけど、逆にこの時期だからこそ、色々なことを考えてできることがあると思います。全員が満足できるというのは難しいかなと思います。
M:ほんとに意義深いですよね。考えること自体意義深いとおもうんですよね。でその、知的障害の方たちにとって難しいかな?ていうこともすごく想像ができるんですよ。
F:はい。
M:これとこれとこれに制限がかかっているけれども、それができないという時間をまったく何もせずに待つのではなくて、その中でできることをやろう、ということは、単純に代替措置を見つけるんじゃなくて新しいことを見つけていくということですよね。
F:そうですそうです。
M:ね。さっきちょっと子どもの話を出したときの、ダンサーの友人が考えていることなどは、私もお母さんだったらそう感じるだろうと思いました。身体が接触するっていう、身体観の中における非関連みたいなことを、コロナだからっていう理由がわからない、まだ認識できないような子どもたちが「あ!これってやっちゃいけない」んだって知らず知らずのうちに、その価値判断が身体に定着してしまう、ということが怖いってね…
F:あ~なるほど。そういうことですね。いまよくわかりました。
M:よくわかりました?ね?それで、まあ身体にまつわって生きている人間としてそれの怖さがもう一つあるなっと思うのは、慣れてしまったらもともと何だったかというのが取り出しにくくなっていくっていうことがあるんだと思うんですよね。 私たちも先週?先週の今日かな?北九州に半年ぶりに行かせていただいたんですけど…
F:はいはい。
M:財団のインリーチで、ソーシャルディスタンスを保つ、お互いの距離を保ちながらできるWSを私たちもメニューやプランを新しく考えてやらせてもらったんですが…遠征の用意をしましょうっていう段になって、半年ぶりに府外に出るっていうので、遠征が続いている時とかはもう何のこともなくパパっと用意してたのに、トランクにどうやって荷物を詰めていたか?っということも忘れていて…
F:ははは(大笑い)
M:ほんとにまごまごしてしまって…すごく時間がかかってしまって…たった半年遠征していないっていうだけなのに、こんなに忘れてしまうんだなと改めて実感しました。それはまあ、だから笑い話になる話ですけど、ただそういうものだなってね…
F:ええ。
M:だからその、新しい生活様式はある限定付きのものであって、その新しい生活様式にのっとらないといけない理由が確たるものとして理解できている人たちにはいいかも知れないですけど、そうじゃない人たちにとってはそれをこう自分で判断しづらい人にとってはわりと…危ないことでもあるんだなあという気がしたんですね。
F:うんうん。
M:だから、そこをどうにか…なんかうまく伝えたりしながらこの時期を過ごせたらいいのかな~と思うことがありますね。
F:ですね。今の話を聞いてて思ったのは、もしかしたらそれは…知的の子どもさんもだけじゃなくて小さい子どもさんも触れ合う、ハグをする、という習慣がないまま育っていったら、僕たちがある程度子どもの時にいつの間にか身についていた習慣や、人のぬくもりとか、そういうのがわからないまんま育っていってしまいそうですね。それは、ほかの人たち(大人)にもいえるのかな?という気がします。そういえばコロナ過の中、ほんとに触れ合うようなコミュニケーションをとらなくなったような気がしますね。
M:怖いでしょ?なんか…あの~離れているっていうことに慣れていってしまう。ということが怖いですよね。そっちが常の状態っていうかそっちが普通になっていくっていう…
F:ですよね~。
M:そういう心配がなかなか拭えないんですよね。でもう一つだけ別の観点からしゃべると…私その新しい生活様式っていうのが、ニュースなどでこう、フリップに3個くらい項目が書いてあって、これを守りなさい!みたいな形で示されるじゃないですか?であれに、個人的に違和感があるんですね?どうしてこんなに違和感を持つのかな?って…それは感染を拡大させないために一人でも重症になってしまう人たちを作らないために…とても正しい理由がたくさんあるじゃないですか。そのことに反対ではないんですよ。なんですけど、昨日ハッと思って、あっ藤岡さんと明日お話しできる前の日に思いついてよかったわって思って(笑)
F:おう、何ですか何ですか?
M:あのね…多様であるっていう在り方に制限がかかることに対する違和感だったんだなあと思ったんですよね。 生活様式っていうのは本来なら人それぞれでよくって、生活様式が確立するというのはもちろん…日本の人たちの生活様式だとか民族が違っていたり時間が違っていたりすると生活様式もきっと違うと思うんですけど、おそらくその生活様式っていうのは、あるなんていうんですかね…自然な時間の中で培われていったり変化していったりするものだと思いますし、それに従ってない人とか、異なる生活様式を持っている人も、ある程度共存もしてて…そうやって生活様式って大きな時間の流れで変わっていったりすることだと思うのに、ある一つの出どころから「こういうふうにしてください」っていうことを言われることは、多様性に関するある種の介入、のように感じられて来て…
F:あ~はいはい。
M:身体の多様性っていうことをある意味最も大切なものとして身体に向き合っている自分としては、そのことに違和感があるんだろうなっということを昨日自分が思いついたんですね。
F:あの、お話しを聞いてて僕が思ったのは、やっぱりあの、セレノさん、もちろんマホさんにしてもアビルさんにしてもそうなんですけど…
M:はい。
F:アーティストの方だからこそ、色々なことを感じられ、それを表現され、社会に対しても、感じたことを自らの表現方法で発信ができるのだと思いました。
これまで歴史の中で、戦争があったり、例えば、日本でも数多くの大震災がありましたね。
でもその中でも、心を和らげてくれたりとか、前向きにさせてくれたりしたのが、僕は芸術だと思うんです。社会でルールを作ること、基準を作る人がいて社会活動がまわっている。でも、それだけではなく、やはり人の心を動かすのは芸術だし、それを表現する人たち(アーティスト)だと思うんです。たとえば、歌の歌詞の中には、多くのこめられたメッセージって、それこそ昔の学生運動時代に作られフォークソングなんてまさしく社会活動の一つになりましたよね。
M:これまでの多様性ってこうやん。じゃなくて、こういう時期になっても、簡単な言い方になりますけど、まだまだこういうことができるよっていうこれまでなかったものを発想していくっていうことですよね。
F:なんとなく僕もだし、きっとセレノさんお二人もそうだと思うんだけど結局、感染の専門家でも何でもないわけじゃないですか?
M:なんでもないです。
F:だから、そこは専門家にお任せしていくしかないですよね。
M:ええ。
F:その中で、実際に自分たちが出会った人たち、一緒にダンスをしている人、芸術文化活動をされてる方たちの中で、やっぱり、コロナ過の中ででも、なんか違うなっていうものは、芸術活動、表現活動として社会に発信していかなければ意味がないわけですね。
M:ええ、そうですね~。
F:そういった意味では今回の対談とかを一つにまとめ上げて発信するのも、その一つの役割になるかと思うし、ただ、結局こうやって話しながらですね、理屈じゃないものっていうものは、やっぱりステージとか公演とかで、皆さんに伝わっていくわけじゃないですか。だから表現することは、そのまま続けていかないといけないのかなと思いましたね。
M:すばらしい~!ありがとうございます!どうですか阿比留さん、なんかご質問とか?
A:自粛していらっしゃったじゃないですか?
F:はい。
A:その時に自分の身体とかに何か影響とかありました?
F:えーと…太りました(笑)太った太った!(大笑)
あの、僕の場合ですね、食べ過ぎよりも、飲みすぎました(笑)
M:へえ~お家で?
F:はい。オンライン飲み会が(笑)
M:ああ、オンライン飲み会ね!はいはいはい!
A:それ以外は?
F:それ以外でしょ?
A:家から出たいなあっていう思いが強くなったり、いままで当たりまえにできていたことができなくなったということへのストレス指数?みたいな感じですかね?あんまりこう不便は感じなかったという場合と、もうちょっとかなんな~っていう感じとか…
どちらかといえばどっちかな~みたいな感じですかね。
F:そうですね。もちろんストレスが溜まる方が多いですね。あんまり長い距離は走れないんですけど昨年までは、マラソン大会にも出場していましたね。
M:あ~そうなんですね~。
F:北九州マラソンは毎年目標にして参加していたので、その目標に向かって、大会までの間に10㎞程度のマラソン大会によく参加していました。あとは、沖縄が大好きで、毎年沖縄に遊びにいってたんですよ。
M:ああ~!
A:まったく行けない…
M:ほんと。まったく行けないですよね~
F:そうなんです。行けてないですね。
M:う~ん…なんかそれも今年の夏だけやからってなんか自分に言い聞かせるところってないですか?
F:はいはいはい。
M:ね!次行くぞ~って思いますよね。
F:はい。ふふふ。
M:でも、もうそんなことだらけですよね…
F:だから例えば僕の場合は…
M:藤岡さんの場合は?
F:キャンプも2年前くらいから好きになって、それも行けなくなったので、ストレスが溜まるじゃないですか。だから、家のベランダにテントを張ってキャンプ気分を味わうべランピングを緊急事態宣言中にやりましたね(笑)
M:わあ~すご~い!!なんかでもあの~やっぱり子どもたちもアウトドアの好きな子どもでも親は連れて行ってあげられないし、おじいちゃん、おばあちゃんところに帰省もできないし、なかなか家族旅行もできないからっていってやっぱりベランダでテントを張ってその中に子どもを入れてあげたりとか、プールをベランダでやったりとか…なんかああいうのってこう親にとってもそうなんでしょうけど子どもにとっても「非日常」、れっきとした「非日常」だし…なんでしょう?山にほんとは行きたいんだけども行けないから家でその代わりにっていうより、お家の中でこんなことができた!っていうような…なんかそういう楽しみ方…
F:ありますよね。で今の話でいくと意外と普段、ベランダって出ないんです。ベランダでテントを張ってですね、今ほんとに茉歩さんの言われた通り寝泊まりしていると意外と部屋より涼しくて気持ちいいことがわかったんです。
M:コロナがなければ気づかなかったベランダの魅力!
F:そう。気づかなかったベランダの魅力ですね。
M:そういうことってありますよね。
A:まほさんはそういうことってありましたか?
M:私がちょっと聞いたのは…祇園祭ができなかったんですよね。もうこれ千何年ぶりに初めてみたいなことらしいですけど…
F:はいはい。
M:私も大学時代の友人とかに鉾町で生まれ育った子がいて、そういう鉾の立つ鉾町の人たちって祇園祭に対する思い入れがもう半端じゃないんですよ。えっ!そういえば北九州も祇園太鼓って今年できないんじゃないですか?
F:はい。全部中止です。
M:ですよね。でああいうのが好きでほとんど命がけのような人はがっくりという人っていらっしゃるじゃないですか…
F:いらっしゃいます。
M:でその祇園祭の紋章がこうキュウリの断面に似てるから一か月祇園祭の期間はキュウリを食べへん、みたいなお宅もあるくらいなんですよ。で、ちまきを売るんですけど、中にお餅が入っていないちまきを、無病息災のために自分の好きな鉾に買いに行って次の年にまたそれを入れ替えるっというのがあるんです。
F:はあはあ。
M:それが今年はもう150万本?くらい、かな?だぶついてしまったらしくて…
F:へえ~。
M:でその鉾町のおじいさんがもう泣きながら「もうこんなにちまきが余っとるのを見てわしは…」て。じゃあネットでほしい人に販売してみてはどうですか?という運動が起こって、もうほとんどちまきが残らずはけたそうで。そしたらそれこそ障害をお持ちの方だったらちまきを買いに行きたいと思ってもヘルパーさんを予約して連れていってもらわなあかんかったところがもうネットで予約したら次の日に届く…みたいな感じにちまきもなったっていう…それでありがたみが減ったという人もいるんですけど、でも行けなくっても、ようは東京でも福岡でも北海道でもちまきもらえるよっていう風になったって。すみません!話しが長くなって!
F:あ~いえいえ!ぜんぜんです!
M:さあ、もうそろそろ対談も終わりに近づいてきたのですけれど、何か…阿比留さんどうぞ。
A:あの~この騒ぎになってから障害をお持ちの方と触れ合うというか…直接的ではなくともお会いする機会とかってありましたか?
F:はい、あんまりなくなりましたね。
A:もし出会われたり、触れ合われたりする場合の、ガイドラインのようなものなどは法人の方からは出ているんですか?
F:部屋の利用制限が出されましたね。これまで、レインボードロップスWSで使用していた部屋のことです。現在は、通常の定員の三分の一で使ってもらうようにお願いしています。あとは、こちらの障害者福祉会館で企画している講座も同じく受講生の人数制限を行っていますね。
勿論、検温、消毒などの対策も勿論。行ってます。
M:人数制限をしても、もともと参加されていたような方々はいらっしゃるんですよね?
F:そうです。
A:じゃあ、もうその実際には直接的に触れないといけない方の場合、ヘルパーさんはそういうこと(身体に直接触れるということ)は了承は得られているんですよね?
F:そこは、利用者の方とヘルパー派遣事業所の方とでお話しされていると思います。そうしないと(触れ合えないと)支援が出来ないですからね。
A:ですよね。そういうことを改めて確認し合った上で障害者の方とはお付き合いをしているということですね。
M:もし藤岡さんの方から何かあれば最後に是非。
F:じゃあ。今、セレノさんたちがいらっしゃるところ、そこは何処ですか?
M:ここは、京都芸術センターという、もともと小学校だったんですね。子どもの数が減っていって閉校になったんですけれども、それをじゃあどういう施設としてリノベーションするのか?というので、明倫学区の卒業生の人たちと京都市の人たちが相談をして、芸術をする人たちに場所を提供しようということで、教室が12個あるんですけど、音楽とか美術とか演劇とかダンスとか…音楽をやる方には防音室があるんですけど…芸術をやる人たちに貸し出しを無料で三か月間の間、使いたい人が企画書とか予算書とかを年に二回締め切りがあるものに応募して…それに対して認可が下りた人が使用させて頂いています。わたしたちも今ちょうど8月末の公演があるのでその企画でお部屋をお借りしている最中なんです。
F:長期でですか?
M:一企画につき最長三か月です。で普段使いの稽古としてではなく…何か発表する機会がきちんと決まっていて、そのために創作をしますっていうことですね。
F:はあ、なるほど。事務所的な活用はだめだけどあるイベントの練習っていうことですね?
M:あるイベントの本番に向けて練習をします。当然報告書も提出しますね。
F:なるほどね。いや、よくその風景見るなと思って…たしかyoutubeでもあげてましたよね?
M:そうなんですよ!だから黒板が背景にあったりね…部屋によっては全く様子もちがうんですけれども。ここはわりと狭い方の部屋ですね。
F:へえ~なるほどね~。
A:申請して審査されるので…予約して、また次の日に新たに予約して…といった形とは違うもので、スタッフの方が、時間割を組んでくださっています。
F:それはいいですね!
A:だから一年前くらいに申請を出して…決定段階で部屋割りがすでにしてあるので、借りている間の計画が立てやすいんです。
F:それはいいですね~。
M:それで京都芸術センターは使用に際しての条件を二つだけ出していて、使用している3か月の期間に一回でいいので無料で市民の方対象にワークショップをすること、使用者連絡会に出席すること、連絡会は一か月に一回あって使用している方たちの意見交換も行える場です。ただ、現在は両方ともコロナの感染が拡大してからは、ワークショップも開催されておらず、連絡会もされてないんですけどね。まあ芸術センターも4~5月は閉館していましたしね。
F:あ、そうか…そうですよね。
M:6月になったくらいから徐々に使えるようになったんです。もし京都にお越しの際はぜひご案内しますよ!
F:はい!ぜひ伺います!あともう一つ!その他のセレノさんの活動は、レインボー以外の全国での活動はどうなっていますか?
M:2月の終わりからバタバタと中止、延期のラッシュで…何年間もやっているツアーとかもあるんですけど、それは企業が社会貢献の枠でやっているもので、それも今年は中止で…今年は中止っていうのもありますし、単発ででもやりましょうって言っていたのもやむなく中止になったり、来年年開けに延期になったりするものもあって…結構、今時間はありますよね。ただ私は大学で一個だけ授業を持ってるんですけど、それが大学に入構もできず、対面授業ができなかったんです。
F:確かにそうですよね。
M:でオンライン授業も…オンラインの環境って学生によっていろいろじゃないですか?
オンライン授業を受けられる学生とそうでない学生の格差ができるといけないということでオンライン授業でなくて遠隔配信授業っていって、授業内容を毎週、そこで講義をしているかのように学生が読めるようにテキストを作って…私はなぜか演劇論という講義を担当しているんですけれど、受講者が50名以上いたんですけれど、毎週課題を与えて提出してもらって、それ全部に目を通して…
F:わあ!それは大変ですね!
M:つい先日全部で15回のその授業が終わったんですけど、それに時間をかなり注ぎ込みました。ある意味ありがたかったですけどね…普段通りだったらできないよねというほど、やりとりするテキスト量が膨大で…勉強せざるを得なかったので。学生の顔を一度も見ないまま、どんな子かもわからないのに毎週やり取りだけはあって…
F:うわーそれは大変すぎる~!
M:阿比留さんにどれだけ世話になったことか!
A:いえいえ。授業内で配信する映像の編集とかのお手伝いをしただけです。
F:なるほど。はいはい。
M:対面授業だとその場で映像を見せるわけですから見れるのは一回限りになりますよね?ただ遠隔配信授業だと配信期間内であれば見たいときに何回も見れますよね。鑑賞環境もどの人に撮ってもフラットですしね。そんな利点も発見できましたね。
F:はいはい。う~ん…でもやっぱりなんか寂しいなあ~。
M:寂しいですよ!
F:ね?
M:はい。やっぱりその子がどんな子なのか?なんてあれこれ想像しながらでしたらから…やっぱり直接会ってみたかったなって思いますよね。
A:文通みたいでしょうね。
M:そうそう。
F:あははは~。でもあれですよね。茉歩さんがさっき言ったみたいに、この時期に大学生になった人は、ネットのオンラインでのコミュニケーション力は高まるけれど、リアルで会ったときのコミュニケーション力は下がるでしょうね…
M:それは少なくともあるんじゃないかと思いますよ。やっと夢の大学生活と思って京都に出てきたのに…バイトもできない、友だちもできない、授業も受けられない、という。だから成績は厳しくし過ぎずに採点するつもりです。
F:あっははは~。
M:コロナ対策特別点を加味するというと語弊がありますけど笑。学生たちは本当によく取り組んでくれましたので。
F:わかりました!
M:今日は本当にありがとうございました!
A:最後に私から一つお二人にお聞きしたいことがあります。コロナ終息後の芸術文化との関わり方について一言ずつお願いできますでしょうか?
F:もとに戻ってほしいっていうのが一番です。ですが、元に戻ってほしいという希望だけじゃ、僕らは、いけないのかなって。どんな世界になっても、その世界に合った僕らにできることは常に考えていかないといけないんじゃないかなって思っています。ただ、自分も今日お二人とお話ししてみて思ったのは、今できることだけ考えるのもいけないなと、改めて気づきをいただきました。茉歩さんが今日、言われたみたいに、今できることの範囲についても、芸術文化の面で、今の社会に足りないところを、いや、人として成長していく上で大切な感性の部分を含めて発信していく立場なのかなぁ~とは思いました。本当にありがとうございます。
M:大事なことは多分変わらないと思うんですよね。身体でやっていく中で大切なことをこれからも伝えたり共有したりっていうことはしたいなあって…その感覚ができるだけ鈍くならないようにしたいなあって思います。
F:だから一方的に今の社会に対しての批判だけでなく、それに対してやはり僕らが芸術文化の部門で出来ることを常に心がけていかないといけないのかなって、今日のお話しで思いました。
M:もう、大賛成です。はい!長時間本当にありがとうございました。
F:いいえ、こちらこそ。
M:とても楽しかったです。
F:私もです。
実施日:2020年8月17日(月)
注1:北九州芸術劇場と北九州市障害者芸術祭がタッグを組んで生まれたダンスプロジェクト。障害のある方ない方関係なくダンスを楽しみ、それぞれの個性や可能性を発揮できる場として誕生し、一人一人の豊かな個性の色が詰まった“ドロップ”缶のように、何が飛び出すのか、そして何がおきるのか、未知なる可能性が広がるダンスプロジェクトです。
公式HP:http://q-geki.jp/projects/2018/rainbowdrops/
注2:「danceで出会う、新しい世界」北九州市を拠点に活動するダンサー今村貴子のゆるくて陽気なダンススクールです。老若男女国籍問わず全ての人とダンスを踊るため、日々陽気にレッスンに励んでいます。高校生から素敵なマダムまで、同じようにdanceを楽しんでいます!
公式HP:https://reserva.be/imatakadf
【対談者プロフィール】
藤岡 保(ふじおか たもつ)
平成7年に、北九州市身体障害者福祉協会に入職。その後、法人事務局、ヘルパーステーション、デイサービスセンターを経験したのち、現在の北九州市身体障害者福祉協会アートセンターの業務を担当する。アートセンターでは、障害者アートの活動支援、社会への普及啓発活動を目的として、市内のカフェや喫茶店での障害者アートの作品展開催や、商店街や商業施設でのステージパフォーマンスの場など、地域の方々と連携して企画実施している。また、北九州芸術劇場とのコラボ事業として、障害のある人もない人も一緒にダンスを楽しむプロジェクト「レインボードロップス」の事業にも関わり、現在に至る。
photo:Ai Hirano
隅地 茉歩(すみじ まほ)
セレノグラフィカ代表。同志社大学大学院文学研究科修了。日本古典文学の研究者から転身、関西を拠点に国内外で振付家、ダンサーとしての研鑽を積み、1997年阿比留修一とセレノグラフィカを結成、以後代表を務める。
繊細な作品創りと緻密な身体操作を持ち味とし、観客に多様な解釈を誘発する作風で作品を創作。デュエット作品を基軸に、ソロやグループ作品の振付も手がけ、フランス、イギリス、韓国、オーストラリア等のダンスフェスティバルでも作品を上演。
近年は、公演活動にとどまらず、地域の人々が参加する作品を多数創作する他、500を超える教育機関にアウトリーチを行うなど、全国を駆け巡る。TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD2005 にて、グランプリに当たる「次代を担う振付家賞」受賞。京都精華大学非常勤講師。
※本事業は「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市⽂化芸術活動緊急奨励⾦」の採択事業です。