2016年10月18日(火)月齢17.1 / 冒険の喜び

花咲きホールでの公演が終わった。翌日余韻とともに京都へ戻り、月曜日は大学講義と打ち合わせにいそしんだ。

竹取物語をイメージの源泉とした新作「今日もあなたの名を呼ぼう」は、バイオリンとチェロとダンスのコラボレーション。セレノとしては、クラシック奏者との共演の、5作目に当たる。このプロジェクトが立ち上がったこの春、何か日本のものをベースにしようと提案してくれたのはバイオリニストの早稲田さん。

竹取物語は言わずと知れた物語の祖(おや)で、学生時代、平安朝物語文学を専攻していた私としては何度読んだか知れない古典だ。克明にストーリーを跡づけるのではなく、物語に横溢しているさまざなエッセンスを想起させながらも、そこから遠くへもイメージをひらく。なんとも欲ばりな希望とともに創作は進んだ。

結果として、演者も舞台作りに力を貸してくれた技術陣も、劇場の方々も、予想していなかった方向への幸せな航海となった。

作品の終末近く、かぐや姫のモノローグでもない、語り手の説明でもないテキストをバイオリニストに読んでもらって踊るシーンがある。動きは淡々としたステップのみ。ゼロ歳児から入場できる公演なので、あちこちから小さい子の声も響く中、ああ、このことをずいぶんずいぶん前に誰かに話してもらった、と悟った。私はそれを知っていた。

願いの一つに届いた感覚のある本番。

ご来場の皆さま含めお世話になった全ての皆さまに感謝を捧げます。

(茉歩)

写真は山県滞在中のエネルギー源だったお弁当。細やかな心配りに毎回小さな歓声を上げていました。