2016年7月29日(金曜)月齢25.7 / 年中行事であることを超えて

本番会場からホールへの帰り道、雨が降った。空からジョウロで水を巻いているような、そこだけシャワーを浴びせているような、沖縄のにわか雨。空は晴れ上がっているので明るく、どこか笑っているようにも見える雨だ。海は群青と紫と水色がところどころに色のグラデーションを見せつつ遠く水平線まで視線を誘ってくれる。

合宿への同行3年目。南城市にあるシュガーホールのジュニアコーラスは、今年19名の小中学生が、地域巡り出前ステージで、地元の特別養護老人ホームしらゆりの園を訪れた。入所されていたり近くから訪問されたり、数十名のお年寄りにみずみずしい歌声が届けられる。

この本番に先立ち、一泊二日、玉城(たまぐすく)青少年の家でメンバー同士交流を深めながらのリハーサル。仰せつかっている役目はボディーワーク。コーラスの間じゅう立っている身体の、膝の柔らかさと重心の意識にスポットを当ててみた。年に一回という機会、子どもたちの一年の成長を、明確に感じさせてもらえる贅沢さもそこにある。

40分にわたる本番は、沖縄ことばでMCがつながれるという細やかさで、沖縄のわらべうた、日本の童謡や唱歌、コーラスメンバーのレパートリーと続き、お手玉や風車、トーンチャイムなど小道具使いも賑やかな演出。アンコールはアカペラのふるさとを会場全員で歌った。

監督の中村透先生が、「歌はいのちをつなぐね」とおっしゃった控え室での締めの言葉が印象的。その透先生の斜め後ろの客席で本番を見届けながら、歌われ始めた瞬間にそれまでにはなかった電波が放散される眩しさを感じ続けていた。

いっぺー、にふぇーでーびたん(本当にありがとうございました!)ということばで締めくくられた本番のあと、子どもたちは思い思いに夏の光の中に帰っていった。

この日の衣装であった濃いめのピンクのボロシャツ。その一枚を私も頂いて、メンバーの一人となった心の張りを覚える。

沖縄女性の髪の毛は豊かな分量で黒く、肌の美しさを縁取っている。コーラスご指導の先生方やスタッフの方、総勢女性5人のお顔ぶれとの振り返りを兼ねた会食は、食卓の沖縄料理に勝るとも劣らず華やかだった。

(茉歩)

写真はシュガーホールの通用口から歩いてすぐの景観。島の東側の海。