2020年7月6日(月)月齢14.8/いま改めて思う、私たちにとってのアート ~舞台芸術をめぐるそれぞれの捉え方~

ご無沙汰している間に、この世の中が、世界中が、大変な状況となっています。

100年に一度の大災害ともいわれるこのコロナ禍の中、舞台芸術の世界でも人と人が直接の関りを断ち、人が多く集まる事は避けられ、当たり前に演劇やダンスを届けたり、受け取ったりすることが出来ず、アーティスト、劇場としても本来あるべき姿にない状況です。このような状況下で、私たちアーティストは表現の場をどう捉え、これから先の舞台芸術にどういう意味を見出しているのか。
この度、北九州芸術劇場と響ホールの広報誌「Q」2020 年7 月号「いま改めて思う、私にとってのアート~舞台芸術をめぐるそれぞれの捉え方~」という特集に寄稿する機会をいただきました。

今一度、様々なジャンルのアーティストの皆さまの考えや思いを知るとともに、環境の変化や先の見えない状況に不安になっている方々の心にほんの少しでも寄り添うことができればと願っております。

そして何より、どのような事態となっても、セレノグラフィカとして、しっかりと地に足をつけて、ゆっくりかもしれませんが前に歩んでいく所存です。

原文を以下に記載いたします。ぜひお読みなっていただけましたら幸いです。

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隅地茉歩(振付家・ダンサー)

「不要不急」という言葉が定番フレーズになって久しい中で、芸術の果たせることは何だろう、と自問せざるを得ません。肉体や精神の健康を支えるのが医療であるならば、身体や心の元気を支えてくれるのが芸術だろうと自答しています。映像に見入って時間を忘れることもありますが、生の良さには代わりが利きません。五感をフル稼働できる細胞の喜びを、私たちが知っているからだと思います。「距離」によって隔てられることは、触れ合ったり寄り添ったりするのを諦めることではなく、その意味合いをじっくり問い直せる機会なのでしょう。孤独かもしれないその思惟が、創作の新たな扉を開いてくれると予感しています。

阿比留修一(ダンサー)

生きることの楽しみ、人と集うこと、皆んなで一体になること。飲食店で、花火大会で、劇場で、野山で…そう、密の固まり。当たり前のように身近にあった、密の重なり。春からのほんの短い間に、ソーシャルディスタンス、アフターコロナ、リモートワーク、オンラインレッスン…新しい言葉が、長い間使われていたかのように普及して、不思議な感覚に見舞われている。どうしても、違和感を覚えてしまっている自分がいる。と同時に、人が身体を伴って生きているということを、改めて実感する貴重なチャンスなのではないだろうかとも思う。心と身体がつながっている実感。それをダンスという世界で深めていきたい。人間の本質を見失わないためにも。