2017年9月13日(木)月齢23.4 / みんなの体操

RSウィルスというものが流行っているそうだ。長雨で寒暖差が激しかった今夏の東京。その中で免疫力が低下した人口層、中でも多くの幼児たちをそのウィルスは狙い打ちするというから痛ましい。

今年の夏は確かに、さまざまな事業を通じてお付き合いのある各地の方々から、続く咳や喉の痛み、そして発熱、という共通の訴えを多く聞いた。精神力だの意志の力だのでは容易に太刀打ちできない症状。それを押してでも出なければならない現場がある大変さは推し量るに余りある。

9月の頭にかなりの高熱と喉の痛みに驚いて3日連続の点滴通院を体験した。通院3日目、地域医療の拠点病院は朝から非常に混んでいて、処置室は満員状態。文字通り、捌いていくといった有様で看護師さんたちは私たち患者に指示をし、針の抜き差しを繰り返す。処置室は実に老若男女入り混じった絵図である。

よく日に焼けた、働き盛りの屈強な男性と、ほぼ1メートルほどしか離れていないベッドで隣同士で横たわることになった。その人の点滴剤は私のものより大きい。どうなさったのかな、などと知るすべもないことまであれこれ想像してしまう。「いけそう?どうなん?」と顔を覗かせた奥さんは四肢が伸びやかな女性で、前の代の「黒革の手帖」の主演女優さんに似ていた。

朦朧とした足取りで精算窓口近くのベンチで呼び出しを待っている頭上にはテレビ。NHKの、みんなの体操が放映されている。私の左側のソファに座っていたおばあさんが、座ったままで熱心に画面を見つめ、くるくる肘を回したり、上体を左右に捻ったりしていた。リズムに遅れるでもなく、なかなかに軽快。画面の中のモデルさんと、そのおばあさんを見比べるのが興味深くて、それとなく注視してしまった。何より嬉しかったのは、おばあさんが運動の主眼を見逃していないこと。そうですそうです、そこがクリアされていればオッケーなんです、と言いたくなる操作なのだ。振り付けてみたい身体に、病院の待合室で出会えた笑、初秋の朝であった。

(茉歩)

写真は前期に出講している大学の庭で撮った花です。血脈を思わせるような鮮やかさでした。