2017年7月4日(火)月齢10 / nouvelle cuisine

今年も半分折り返し。セレノの6月は毎週火曜日から各地へ遠征の旅に出ていた。福島、福岡、山梨、福島。ちなみに今日からは高知だ。

6月二度目の遠征は、北九州芸術劇場で開催された「音楽がヒラク未来」。芸術監督・監修がピアニストの仲道郁代さんで、事業全体は4館連携。北九州が開催3館目で、後は札幌、来年の春にはスタートであった東京へ戻るという循環プロジェクトである。

北九州での開催テーマは「越境』。音楽の持つ越境性に迫るプログラムが二日間に渡り繰り広げられた。セレノグラフィカの参加使命はまず仲道さんと二者で音楽とダンスのコラボレーションワークショップのプログラムを開発実践すること、もう一つは2015年に発表した音楽とダンスのコラボレーション作品『ひびきあう』の事業報告をすること、さらに仲道さんとコラボレーションコンサートを行うこと、の3つ。

この内の、音楽とダンスのコラボワークやコンサートについては、今年の3月から数回にわたりリハーサルと打ち合わせを重ねてきた。毎回とても凝縮していて、何となく過ぎている時間などはどこにもない。長年試行錯誤を繰り返し更新して来たワークメニューを持ち寄って新たな場所に行こうとする試みは、一緒にキッチンに立つことにも似ている。「最後に蓋をしたまま1分待つとよく馴染むんですよ」「最初にこうやって下味をつけておくと色まで鮮やかに仕上がるんですよ」と経験を惜しみなく交換し、未体験レシピへの扉を開ける。「忘れられない味にしましょう!」「それを皆さんでいただきましょう!」。わざわざ口に出さなくても想いは通底している。だから前へ進んでいける。

ワーク当日。三十人を超える参加者の皆さんはこの新作プログラムを受講してくださった。ワーク中、それぞれがゲルマーカーで思い思いにメモされていた中に「生まれて初めて足や腕で音楽を聴いた」とあったのを見つけた。私たちがダンスのワークでよく行うSTOP&GOを、仲道さん演奏の「ゴリウォーグのケークウォーク」で行ったあと、身体を横たえて聴き入るドビュッシー「月の光」。はずませた余韻まだきの身体が、なだらかに落ち着いていくその皮膚に染み込んで来る音の粒。粒。粒。
後半には初めて目にする光景もあった。動く、音楽と共に動く、音楽に耳を傾ける、と重ねて行った時間のあとのペアワーク。タイミングも相手への触れ方も委ねるという冒険は、私たち自身が固唾を呑むような瞬間を連れて来てくれた。その光景を、しかと瞼の裏に刻んでおこうと誓った。

演奏家の身体があり、演奏家の奏でる音楽があり、動く身体があり、待つことのできている身体もある。そして、両者の紡いでいる時間が流れている。

新作レシピのお披露目となった今回。食材選びや調理法にはまだまだ吟味の余地があると実感。またキッチンに立つ日まで、腕を研ぎ、熱を保とう。そうそう。仲道さんと私たちの共通スパイスである遊び心、これも新鮮なものを沢山仕入れておかなくては!

(茉歩)

写真は、頂戴した花束です。ガーベラはマットな質感が好みです。