2017年6月20日(火曜)月齢25.7 /走り梅雨の頃

伊丹での「夜のことば3」の上演からひと月。思いがけず知人の訃報に触れ、その衝撃から立ち直る暇もなく、また別の知人の訃報に接した。
冥福を祈るということには到底集約できない想いを抱えたまま、仕事はどんどん進行した。

今年度のTMWツアーの楽曲リハーサルはジーベックホールにて。毎年オープニングパフォーマンスをリニューアルするのだが、今年は私たち二人も打楽器パートを担当することに。パフォーマンスの中盤には韓国の伝統打楽器奏者四人とユニゾンで踊る。音楽チームリーダーからの、格闘技を思わせるキレの良い動きを、というリクエストを受けて振り付けたもの。伝統舞踊の素養のあるメンバーたちの身のこなしはさすが。楽器を装着したまま身を翻し、跳ぶ。

そして今年もいわき市勿来への旅が始まった。復興プロジェクトの方々とも半年ぶりに再会。勿来の小学生や高校生との今年の作品作りのスタートである。小学生は今年も五年生、高校ではインクルーシブなワークショップを行なっていく。この復興プロジェクトには大学生たちも別事業で関わっている。大学の講義での学びとは異なる実りをさぞや体感していることだろう。受け入れているプロジェクトの大人の方たちの素敵さが土台。

京都は東山のこちかぜキッズプロジェクトも始動した。今年は三条学童保育所の先生方の中で異動もあり、新しいメンバーでの打ち合わせでは再確認することも多くあった。プロジェクトの開始時に一年生だった子たちももう四年生。どんどん小さい子たちも入ってくるが、大きくなっていく子どもたちとの、今を捉える付き合いが求められている。

一つ一つを丁寧に、入魂で。言わずもがなのことを今更に胸に刻む。継続事業であっても去年と今年は違う。何より受け手の顔ぶれが違うのだ。照準を合わせるべきはそこだ。

6月も上旬のラストは、仲道郁代さんのコンサートで締めくくられた。翌週の北九州での事業の直前、京都コンサートホールでのご自身のリサイタルにお誘いくださったのだ。
演目はシューマンとショパンの名曲の数々。ホール全体が見渡せる後方客席からは、演奏者である仲道さんの身体含め、聴衆の身体もよく見える。聴衆の集中や、息継ぎの波立ちが演奏者の繰り出す動きと共振している。幸せな時間だった。私たちの席の隣には小さい女の子がぎゅっと指を握りしめて、自分の将来の夢の姿に聞き入っていた。喝采の後アンコールに出てこられた仲道さんの「ノクターン20番 レント・コン・グラン・エスプレッショーネ」嬰ハ短調(遺作)を聴きながら、亡くなった知人の魂が、今癒されていっているのだと確信した。哀傷のために演奏されているわけではないのに、それが鎮魂となる場に立ち会った。演奏家の命の声の響きによって。

(茉歩)

写真は出町柳の道端で見つけた名も知らぬ草花です。花の写真を撮るのが好きです。カメラマンだった父親譲りで。