2017年3月31日(金)月齢3.0 / また明日から

 2016年度最終日。春の雨というには雨脚が強く、冷え込む1日であった。
ここ数日、全国の様々な劇場にご勤務の方々から、ご異動のお知らせが届いている。「そういう時期だな。。。」と年度の終わりを実感する。その方たちと一緒に作り上げた現場の数々が、次々と鮮明に蘇る。

「さよならは別れの言葉にあらず」とは、<劇場の木村佳乃>と呼ばれていた北海道上川管内在住の女性の台詞。彼女のシャープな横顔と共によくこの言葉を思い出す。まさに仰せの通りで何の異論も無いのだけれど、感動を共にした人が他業務に転出なさることの寂しさも無いと言えば嘘になる。新しい職場に行かれても、舞台に関わられたことの喜びを何らかの糧にして行って下されば幸いである。

 今週月曜には、神戸のダンス留学の5期生の卒業式に参列し、彼らの門出を祝った。11人のこれからのそれぞれの道。<決意表明>というめいめいの短いスピーチには、志向性の違いはありつつも同じ学び舎で学んだ紐帯が感じられ、白い大きな紙の前に、どの人もが意気揚々と立っている様子を想像した。胸の中でエールを唱えつつ、卒業式名物「仰げば尊し」ダンスが踊られるのを列席者と共に眺める。長田という町がこの人たちを育んでいることの意義の大きさを実感する。

 そして、セレノグラフィカの今年度のパブリックな最終事業は静岡。2010年から繋がりのあるメンバー、セレノコンパーニョの企画運営する子どもたちのワークショップ成果上演『ダンスの森へでかけよう!』だった。もと映画館だった劇場。6歳から8歳の19人の子どもたちは、4回のワークで驚くほどの吸収を見せ、堂々と踊りきってくれた。自分があの年齢だった時に、親やふだんのお友だちと離れてたった一人で新しい場所に乗り込むなんて想像もできないことだった。しかも、上演中、<踊る人>の顔をする。家族ですら見たことのない表情だろう。上演後の振り返りで堂々と発言するお嬢さんの映像に接し、感涙されたお父さんがおられた。10歳にも満たない子の胸の中に、ダンスへの想いがあることは何とも言えない喜びだ。

明日からは新年度。この稼業に異動は無いけれど、新たな気持ちでスタートを切ろうと思う。継続中の事業も多く、これまでに経験の無い仕事の予定もある。
経験値を全て注ぎ込んでジャンプすること。無様上等、磊落に右往左往していきたいものだ。

(茉歩)

写真は完成ホヤホヤのこちかぜフォトブック。これが3冊目になります。