2016年3月7日(月)月齢27.5 /回顧と展望

随分久しぶりに近鉄電車に乗っている。次年度の打ち合わせに向かっているのだが、10年前までほぼ毎日乗っていた路線。懐かしい駅が次々に行き過ぎる。

着任した頃は、毎日どこか慌てふためいて揺られていた電車。私が勤めていたのは帰国生徒の受け入れ校だったので、高校なのに第二外国語の先生も何人かおられた。

ある日、学校へ着て行く洋服が決められず、友人の結婚式に行くようなワンピースを来て出勤することに。まさに苦肉の策。すると同じ車両に乗り合わせたスペイン語の女性の先生が、こちらをじいっと見てらっしゃる。「あ~。やっぱりこの服は完全に失敗だったよなあ」と反省しつつ、近づいて挨拶してみると、意外な反応。

「素敵なお洋服ですね。美しく装うことは嗜みですから生徒も喜びます。彼らはあなたの授業だけじゃなく、あなたご自身のことを見てるのですよ」。冴えた返答もできずに、うつむいてただただ恐縮するしかなった新米の私。その先生は姿勢も歩き方も筋金入りだった。

当時の教え子は既に立派に社会に立ち交じらっていることだろう。嗜みの蓄えも相当にあることだろう。

曇天のもとに広がる丘陵。高校の校舎のある方向を遠く眺めてみた。失恋してうなだれて、でも松尾芭蕉の句の授業中に、生徒の光る発言に出くわして勇気をもらったりしたものだ。

この4月から新しい教え子になってくれる大学生はどんな人たちなのだろうか。

(茉歩)